元小結高見盛の振分親方(39)が、声を弾ませた。「良かったですね~」。リオ五輪女子マラソン代表に福士加代子(33)が選ばれたことを心から喜んだ。

 2人は同じ青森県板柳町生まれで、実家は車で10分の距離。現役時代の09年秋に、地元イベントで同席したこともある振分親方は、福士が大阪国際女子優勝後に名古屋ウィメンズにもエントリーしたことを心配していた。「(陸連と)ごちゃごちゃしてましたね。むちゃして走る必要はないと思ってたんですよ」。その思いが通じたのか、福士は名古屋を回避し、無事に五輪代表の座も射止めた。

 小学校時代は、振分親方もよく長距離を走った。「町に1キロのコースがあったんです。1回走るごとに、教室の表に星をつけた。走るのは得意じゃなかったけど、体を動かすのは好きでした」。標高1625メートルの岩木山を見ながら、自然豊かな道を駆け抜けた少年時代。「福士さんも、岩木山を見ながら走ってたと思いますよ」と思いをはせた。

 「結果は後からついてくるという気持ちで全力を出してほしい。五輪でやり切ってもらいたい」。現役時代は常に全力相撲でファンを喜ばせた振分親方。同郷のヒロインへ、エールを送った。【木村有三】