現役商社マンボクサーが、夢の世界王座奪取に挑む。WBC世界ライトフライ級3位の木村悠(31=帝拳)が11月28日に宮城・ゼビオアリーナ仙台で、同級王者ペドロ・ゲバラ(26=メキシコ)に挑戦することが25日、発表された。08年6月のプロ初黒星をきっかけに「自分を鍛え直したい」と都内の電気関連の専門商社に中途入社。苦労の末にたどり着いた舞台で、結果を出す。

 初の世界挑戦が決まった木村は、きらきらと目を輝かせて言った。「この試合で人生を変えたい」。アマ時代にしのぎを削った八重樫東、五十嵐俊幸らが世界王者となる姿を複雑な思いで見てきた。デビュー9年目でつかんだチャンスに「ライバルたちと同じ舞台に自分もようやく立てる。必ずベルトを取る」と力強く言い切った。

 異色のボクサーだ。08年6月のプロ6戦目での初黒星をきっかけに、サラリーマンとの二足のわらじで競技を続けることを決意。東京都内にある、電力関連の専門商社「植松エンジニアリング」に中途採用試験を受けて入社した。「このまま続けても強くなれないと思った。すべてはボクシングのため。180度自分を変えるために、社会に出て自分を鍛え直そうと思った」。

 平日は午前9時から午後5時まで法人向けの営業部に勤務。退社後にジムに直行する生活を7年近く続けてきた。肉体的に大変な面はあるが、得た物は大きい。「仕事をすることで責任感とかプロ意識を学んだ。苦労した分だけ、この試合で勝った時の喜びも大きいと思う」と力を込めた。

 ゲバラは、昨年12月に3階級制覇を目指した八重樫を強烈な左ボディー一撃で仕留めるなど1発を持った実力者だ。木村も独特のタイミングを警戒も、「打たせずに打つという自分のボクシングを徹底的に作るだけ」と迷いはない。勝って「現役商社マン世界王者」になる。【奥山将志】

 ◆木村悠(きむら・ゆう)1983年(昭58)11月23日、千葉市生まれ。中学でボクシングを始め、法大1年時に全日本選手権ライトフライ級優勝。卒業後帝拳ジムに入門し、06年10月にプロデビュー。14年2月日本ライトフライ級王座獲得。3度の防衛後に返上。161センチの右ボクサーファイター。