プロレスラー鶴見五郎(61)の神奈川県茅ヶ崎市の自宅敷地内に29日午前2時ごろ、見知らぬ男が入り込んだ。就寝中だった鶴見に気付かれた男は慌てて逃げ出したが、鶴見と25歳の長男に取り押さえられた。茅ケ崎署によると、男は泥酔していて「記憶がない」などと供述している。直接的な被害がなかったこともあり、鶴見は「できれば寛大処置してもらいたい」と話している。

 ガターーン!

 闇夜を切り裂くような物音だった。熟睡していた鶴見は窓に目を向けた。夢から覚めない中、20歳の長女が訪ねてきたのかと一瞬、勘違いしたが、そこには見たこともない中年がボーッと立っていた。反射的に「誰だ、オマエは?」と怒鳴った直後に、その男は逃げ出した。時計を見ると午前2時だった。

 隣の部屋に寝ていた長男ゆうにさん(25)から「オヤジ、どうした」と声を掛けられ、すかさず「どうでもいいからとにかく追い掛けろ」と指示をした。ゆうにさんは裸足のまま追い掛けた。玄関を出て、逃げていく男の後ろ姿を確認した。約300メートル離れた路上で男が両脇腹を押さえて、荒い呼吸でゼイゼイと苦しがっていた。

 男がポケットをまさぐる行為をしていたので、ゆうにさんはナイフなどの凶器を持っているのではないか警戒。ただ、男が抵抗しそうもなかったので、両手をつかんで取り押さえた。3分後に追い付いた鶴見が、男の左腕を締め上げると「すみません」とろれつが回らない口調で平謝りした。

 ゆうにさんが男のポケットから携帯電話をみつけ、そのまま110番通報し、茅ケ崎署に引き渡した。茅ケ崎署の調べによると、住居侵入で逮捕された男は横浜市在住の田村祐昭容疑者(42)。勤務先は茅ケ崎市内で28日午後8時から、会社の同僚8人と一緒に飲み始めた。ビールジョッキ2杯と焼酎5~6杯を飲んだところまでの記憶はあるという。同僚と別れて茅ケ崎駅から徒歩20分の勤務先に駐車した自家用車内で夜明かししようと市内をフラついているうちに、鶴見の自宅の裏側にある有料駐車場に迷い込んだという。

 同駐車場では2週間前に車が壁を破損する事故があり、すんなり鶴見の自宅敷地内に入り込むことができる状態だった。田村容疑者は「何も記憶がない」などと供述しているという。

 父子タッグで思わぬ“場外乱闘”を演じた鶴見は「酒を飲むなら飲まれちゃいかん。ビール2杯とちょっとの焼酎で酔っぱらうこと自体が修行が足りない」と怒りながらも「睡眠時間が2時間になったぐらいで被害はない。警察には寛大な処置をしてもらいたいね」と訴えた。