ボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(33=大橋)がWBA、WBC、WBO世界同級1位中谷潤人(28=M・T)とのビッグマッチを制した。2年ぶり2度目となる東京ドームのメインイベンターを勝利で締めた世界注目の「モンスター」が本紙に手記を寄せた。
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5万人を超えた満員の東京ドームの景色は最高でした! 本当にファンのみなさんのおかげです。そして、常に練習に集中できる環境をつくってくださった大橋会長やジムの全選手、スタッフのみなさんにも感謝の気持ちを伝えたいです。何より公私においていつもサポートしてくれたトレーナーの父、家族にも感謝します。ありがとうございました。
昨年1月からこの東京ドームまで5試合ありました。常に次戦が決まっている状態で気が抜けなかったです。オフも張り詰めていましたが、それが充実していて、短く感じました。この5試合は自分が会長に「やる」と断言したので、あとはやるだけ。突き進むだけでした。疲労は? とよく聞かれましたが、試合が1番の生きがい。「苦」ではなかったです。中谷選手との試合という目指す場所があったことも大きかったです。
多くのファンのみなさんまで知っている、決められたストーリーでした。一昔前なら先のことを見すぎると「足をすくわれるぞ」という指摘もあったと思います。だからこそ、自分は何としても勝たないといけないと感じていました。この年齢で昨年は4団体王座の4度防衛、今年最初は中谷選手との試合で勝ちました。誰しもができることではないことをやれたとの自負もあります。
3月のカード発表会見で「格の違いをみせる」「なめられている」と少し強めの言葉を口にしました。直接、中谷選手と会ってお互いにニコニコして頑張りましょうという雰囲気ならば、誰がこの一戦を期待してくれたでしょうか。ボクシングはスポーツ。その自分の意識は何も変わりません。ただ心の奥底に格闘家の気質もあるので、その魂みたいなものが言葉になりました。それほどの戦いでした。
30代に入り、自分の中には研ぎ澄まされた感覚があります。相手は何がしたいのか、どう思っているのか。予知というか心理状態を読めるようになりました。経験値もあると思いますが、呼吸や表情などで自分のパンチに対して相手がどう感じたかを何となくみ取れています。このすべてを把握している選手が強いのだと思います。常に考え、意識していなければ得られない感覚でしょう。しかし世界のトップはその「域」でやっていると感じています。こういった感覚的なものも伸びているからこそ、まだまだ突き抜けることができると考えています。
今はボクシングの底辺拡大というやりがいも感じます。子供たちがあこがれるスポーツにしたい。あこがれてもらえる存在にもなりたい。試合前、自費でシューズを購入して小中高生に向けてプレゼント企画にも取り組みました。キッズたちがチャンピオンを目指す気持ちになってもらえたらうれしいと思ったからです。今夜の試合で1人1人感じることは違うと思いますが、勇気や「明日から頑張ろう」というエネルギーを持って帰ってもらえたらうれしいです。
ボクシングは地上波で生中継されていない時代です。自分は試合で見せるやり方ですが、選手それぞれ注目をしてもらう方法は違っていいと思ってます。ファッションでも、発言でも、何でも「おっ」と思わせることが大切だと感じています。自分はSNSが大事と考えていますし、オフの時期に合うような番組があれば、地上波に出演することを考えています。
もし東京ドームで3度目の試合ができる機会があるならやりたいです。実は会長から「無敗のまま東京ドームで引退試合をやらせたい」と言われています。今後も本当に順調にキャリアを積むことができたら、会長の望むことを体現したいと思っています。ここまで来たら自分1人のためではないなという感覚がありますから。今後も負けることは1ミリも考えていないです。無敗のまま引退というのが理想という気持ちが強いです。また新しいストーリーが始まると思いますので期待してください。(4団体統一スーパーバンタム級王者)
◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。父真吾氏の影響で小学1年から競技開始。高校でアマ7冠。12年7月にプロ転向。14年4月、6戦目でWBC世界ライトフライ級王座を奪取。14年12月、WBO世界スーパーフライ級王座を獲得し2階級制覇。18年5月、WBA世界バンタム級王座を獲得し3階級制覇。19年5月にIBF同級王座、同年11月、WBSS同級制覇。22年12月、史上9人目の4団体統一王者に。23年7月にWBC、WBO世界スーパーバンタム級王座を獲得して4階級制覇。同12月に史上2人目となる2階級での4団体統一に成功。身長164・5センチの右ボクサーファイター。

