WBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志(33=ワタナベ)が50連発のラッシュで王座統一&V6に成功した。暫定王者ブライアン・バスケス(25=コスタリカ)に、序盤から得意の左右のボディーブローをたたき込んだ。ロンドン五輪男子ミドル級金メダリストの村田諒太(26)も参考にした必殺パンチでダメージを与えると、最後は50連発のラッシュで、無敗の暫定王者を8回3分TKO勝利した。世界戦は6試合目のKOで、世界的な強さを見せつけた。

 怒涛(どとう)の59連発だった。8回2分20秒、内山は左フックで無敗の暫定王者バスケスをよろめかした。動きが鈍った獲物は見逃さない。残り30秒から速射砲のようなラッシュの猛攻で、相手をロープ際に追い込む。レフェリーは終了のゴングと同時に試合を止め、同回3分TKO勝利。「倒れないなと思って殴りつけました」と大歓声に応えた。

 クレバーな戦いだった。4回までに「打ち終わりにボディーブローが入る」と相手のパターンを把握。5回からロンドン五輪金メダリストの村田も参考にした左右のボディーフックでダメージを与えた。相手がボディーを警戒したところに、右ストレート、左フックを顔面にたたき込む。最後は、無敗でダウンもない相手の対策として、磨いてきた高速連打で仕留めた。

 世界戦6連続KOの日本記録のかかった7月のファレナス戦。地元埼玉・春日部での凱旋(がいせん)試合だったが、偶然のバッティングで3回負傷引き分けとプロで初めて勝利を逃した。右目上の傷は長さ6センチ、深さ8ミリの重傷。地元の晴れ舞台での屈辱に「今まで最も悔しかった」と敗者のような気分に陥った。試合後はケガもあり練習もできず、約3週間、自宅に引きこもった。

 救ってくれたのは地元の仲間たちだった。春日部中学時代の同級生たちは優しかった。「バッティングのアクシデントは仕方ない。引き分けで防衛できたことで、また試合を見られるから、良かったよ」と励まされた。「次こそはっきりと白黒つける」。8月からロードワークを再開し、10月中旬からスパーリングを積んできた。

 12年最後の試合で、心配を掛けた家族も安心させたかった。7年前の11月に父行男さん(享年58)を亡くして以来、母百代さん(61)は、息子の試合を支えにしている。11月10日、自身の33歳の誕生日。内山は、前戦で心配を掛けた母に「生んでくれてありがとう」の電報と、バラの花束を贈った。前戦の謝罪と、大みそかへの決意を示す行動。豪快なKO劇で、親孝行もできた。

 今日1日からアテネ五輪男子フライ級金メダリストのユリオルキス・ガンボア(31=キューバ)が同級暫定王者に昇格する。大みそかに2年連続で暫定王者を下しただけに、今年はガンボア戦の期待が高まる。「とにかく決まった試合を全部勝っていき、ガンボアと戦いたい」。日本人世界王者は8人に増えたが、本物の王者になるべく、今年もKOロードを歩む。【田口潤】