大関稀勢の里(29=田子ノ浦)が平幕安美錦に敗れ、黒星スタートした。天覧相撲の中、同体取り直しとなった後の一番は、相手の変化で体勢を崩して押し倒された。06年初場所の大関栃東以来、丸10年遠ざかっている日本出身力士の優勝へ、最も期待される大関がいきなりつまずいた。連覇を狙う横綱日馬富士ら、他の上位陣はそろって初日を出した。

 日本出身力士の番付筆頭が、早々に黒星を喫した。取り直しの一番、稀勢の里は安美錦の左変化に泳ぎ、一気に押し倒されて完敗した。支度部屋に戻ると、口をとがらせながら「フゥ~」と息をつくだけ。その表情には憤りよりも、むなしさが漂っていた。

 最初の一番は立ち合いから押し込んだが、はたき込みに屈した-かに思われた。土俵下に勢いよく落ちた安美錦が井筒審判長(元関脇逆鉾)に直撃。マイクが壊れるほどの衝撃で協議に時間を要したが、微妙な判定ながら同体とされ命拾いした。だがそのかいもなく、自身4度目となる初場所初日黒星。過去3度は7勝、8勝、7勝と振るわない。14年は大関昇進後初の負け越しを喫しているだけに、優勝争いどころか苦戦する可能性もある。

 1年ぶりの天覧相撲とあり、朝稽古後には「引き締まりますよね。まあ土俵に上がったらね、力を出し切るだけですけど。やっぱり、いつもと雰囲気が違います。非常にうれしいことですし、光栄です」と話していたが、意表を突かれた。まだ初日を落としただけ。栃東以来10年ぶりの優勝へ、和製大関の命運はいかに。【桑原亮】