平幕で唯一無傷の高安が、力強い相撲で白星を重ねた。右上手を引きつけて前に出て、阿夢露を押し出した。「上手を取って、うまく崩して行けました」。満足げに振り返った。

 8連勝した14年名古屋以来9場所ぶりの初日から6連勝。発奮の源は、左足の負傷で初めて休場した昨年秋場所にあった。国技館ではなく、部屋のテレビで取組を見ざるを得ない日々。「つらかった。目立った力士がいると悔しかった」。

 同場所中に母ビビリタさんの故郷フィリピンの英雄で、ボクシング世界6階級王者パッキャオが来日。14年に初対面して感激した高安も、フィリピン大使館での夕食会に招待されていたが、休場中で無念にも欠席した。「すべてが悪い方向だった」と落ち込んだが、救ってくれたのもパッキャオだった。代理出席した母を通じて「頑張ってほしい」とエールをもらった。「僕もフィリピンの血が半分入ってますから。向こうの人たちにも英雄と言われるように頑張らないと」。強い気持ちでけがを治し、今場所の奮起につなげた。

 「上位戦を組まれるまで勝ち続けたい」。照準は大関、横綱の上位陣。まだまだ連勝街道を突き進む。【木村有三】