SKE48松井玲奈(24)が8月31日、名古屋・栄のSKE48劇場で、最後の公演に出演した。7年前、アイドルとして初ステージに立った小さな劇場で、万感の思いを込めて歌い踊り、涙で、2588日のアイドル人生にピリオドを打った。終演後は、新幹線で東京に向かい、ニッポン放送「ミュ~コミ+プラス」に生出演。卒業に余韻に浸ることなく1人での芸能活動が始まった。

 夢を求めて駆け込んだ劇場に、松井玲の涙声が響いた。アイドルとして歌う最後の曲は、「遠くにいても」。故郷から旅立つ友に、同じ空を見て近くにいることを伝える応援歌は、再出発を決めた心境にピッタリだった。「この曲でたくさんのメンバーの卒業を見送ってきた。SKEとして一番最後に歌うのが、この曲であることがうれしい」。震える声はメンバー、ファンの心も揺らし、場内にすすり泣きの声が漏れた。

 残ったアイドルとしての一瞬一瞬を、心の底から楽しんだ。ステージに上がるや、客席に投げキス。ダンス曲「Glory Days」では通常、研究生が担当するバックダンサーを初めて担当した。8月30日の豊田スタジアム公演での振りミスを指摘されると、ステージで土下座。サービス満点のラストステージだった。

 2008年のグループ創設から絶対エースに君臨した松井珠理奈がひまわりなら、道端にひっそり咲くかすみ草だった。踏まれても伸びようとするしんの強さで、ファンの心をつかんだ。セレモニーでは、かすみ草の花冠と花束を贈られた。「これからはかすみ草よりは大きな花を咲かせたい。バラは恐れ多いので、ユリの花ぐらいですかね」。自分らしい控えめ発言がつぼにはまったのか、ケラケラと笑った。

 デビューからのキャッチフレーズは「12時まで魔法は解けない。ガラスの靴は脱ぎません」。最後に駆け付けた同期の松井珠、大矢真那と記念撮影をすると、最終の新幹線で帰京。2588日のシンデレラタイムを終えて、ガラスの靴を脱いだ。魔法が解けた9月1日午前0時5分、「ミュ~コミ+プラス」に5分遅れで生出演し、「松井玲奈です。(頭にSKE48ってつかないのが)変な感じ、ウフフ」。すがすがしい笑顔で、早速、船出した。【森本隆】