<AKB卒業

 大島優子の真実(下)>

 今月9日の卒業公演。大島優子(25)は最後に言った。「私、絶対ファンの方の顔と名前忘れな~い」。大島の誕生日公演での応援をを取り仕切ってきた「生誕祭委員」歴8年のJINさん(38)とイッセーさん(35)は、この言葉がウソではないと言った。「人並み外れた記憶力で、会った人のことは必ず覚えていた」。JINさんの友人で、1度会ったきりの板野友美ファンが、約4年後に1人で大島の握手会に行くと、「あっ、JINさんのお友達でともちん推しの●×さん」と覚えていたという。

 それほど温かく接してきたファンに、目を覚まされたこともあった。2位に入った09年の第1回総選挙以降、ファンから「1位になりたい?」と聞かれても、「あっちゃん(前田敦子)との仲もぎくしゃくしたくないし、2位のままでいい」と返していたが、第2回総選挙投票締め切り3日前の10年6月5日、千葉・幕張メッセの握手会で、あるファンに問い詰められた。

 「本当に1位になりたくないの!?

 やる気あるの!?」

 怒声が会場に響き、大島はポロポロ涙を流しながら本音を明かした。

 「本当は1位になりたい…」

 結果は、中間結果の1501票差を逆転して、597票の僅差で1位。大島は泣いてファンに感謝した。

 JINさんは「8年も応援していると、親戚や友達のような気もしてくる」と話す。握手会で「MCの時は客席じゃなく話す仲間を見た方がいい」と助言すると、翌日から修正していた。逆に「私は違うと思う!」と反論してくるときも。まるで恋人や夫婦や家族のように喜びを分かち合い、ケンカもしてきた。AKB48大島優子は、本人だけでなく、ライバルの前田、寝食を共にした仲間、叱咤(しった)激励してくれるファンのみんなで作り上げた“作品”だった。

 卒業公演の最後には「ソロイベントをやったら、ぜひ来てくださいね。大好きです」とも言った。イッセーさんは感謝を込めて誓った。「普通はアイドルを卒業したら応援もやめるものなんですが、優子ほど僕らに幸せを返してくれた人は他にいない。これからもずっと応援団です」。

 フィールドが変わっても、大島とファンの絆は変わらない。【瀬津真也】(おわり)