「~しちゃったりなんかして」「きらーん♪」など独特のアドリブ吹き替えで知られた俳優広川太一郎さん(ひろかわ・たいちろう=本名・諶次郎=しんじろう)が3日、がんのため都内の病院で死去していたことが8日、明らかになった。68歳。東京都出身。葬儀は近親者で済ませた。

 広川さんは日大芸術学部卒業後、俳優の道へ。映画「男はつらいよ」第1作などに出演後、60年代から洋画や海外ドラマの吹き替えで活躍した。映画「007」の3代目ジェームズ・ボンドを演じた英俳優ロジャー・ムーアや、「お熱いのがお好き」の米俳優トニー・カーティス、「大統領の陰謀」のロバート・レッドフォードなど、渋い二枚目の声を多く務めた。

 一方で、コメディーの分野でも独壇場だった。ジャッキー・チェン映画の予告編や「モンティ・パイソン」シリーズのエリック・アイドル、「Mr.Boo」シリーズのマイケル・ホイ、「キャノン・ボール」など、ひっ張りだこだった。「あらららら」「とかなんとか言っちゃったりして」「恥ずらかしい」「そんなバナナ」「誰か来るーぞー警部だ」など、台本を脱線した軽妙なアドリブ、ダジャレは「広川節」「広川調」として親しまれた。

 アニメも多く「ムーミン」のスノークや「あしたのジョー」のカーロス・リベラ、「宇宙戦艦ヤマト」の古代守などのキャラクターを演じた。CMナレーションも全盛期には月に30~40本も務め「広川太一郎の声を聞かない日はない」と評された。最近も「全国的に助かりマスク」などのCMでおなじみだった。

 ラジオのDJやテレビキャスターも務めるなどマルチな活躍で、80年代には「おはようテレビ朝日」のやじうま新聞コーナーを担当していた。