フランスで開催中の世界3大映画祭の1つ、第79回カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを競うコンペティション部門に出品された、深田晃司監督(45)の新作「ナギダイアリー」(9月25日公開)の、ワールドプレミアとなる公式上映が13日(日本時間14日)行われた。エンドロール中から約7分間にわたる拍手喝采とスタンディングオベーションが巻き起こり、同映画祭に初参加の主演の松たか子(48)は「こういう作品に関われて良かったという、ご褒美みたいな感覚で今、ここにいます」、共演の石橋静河(31)も「憧れていましたけど、憧れ、願ったとて、来られるものではない。監督に感謝しています」と感謝した。授賞式は23日(日本時間24日)に行われる。
「ナギダイアリー」は、第39回岸田國士戯曲賞を受賞した平田オリザ氏の代表作「東京ノート」に着想を得て、深田監督が自らオリジナル脚本を執筆。同作の精神を受け継ぎながらも、岡山県奈義町がモデルの「ナギ」を舞台に新たな物語を紡ぎ、企画の立ち上げから9年の歳月を経て完成させた意欲作。松は自然豊かな町「ナギ」でひとり創作に打ち込む彫刻家の寄子、石橋は寄子の弟と離婚した元妻で、東京と台湾で建築家として活躍する中、ナギを訪れ、かつての義理の姉・寄子の彫刻のモデルを務める友梨を演じた。
ジョルジオ アルマーニのブラックのドレスに、ブシュロンのジュエリーを着けてレッドカーペットを歩いた松は「カンヌの街で、盛り上げるよ、という一体感…エリアが1つになっているのがすごい」とカンヌの印象を語った。そして「自分が出演したものを、お客さまと一緒に見ることが基本的にないので…ちょっと罰ゲームみたいな、地獄みたいな感じ」と、独特の言い回しで、観客と一緒に鑑賞した公式上映を振り返り、取材陣を笑わせた。
その上で「試写以来に(作品を)見て、純粋に楽しめた。異国の方が字幕も見つつ、映像も見つつ、ちょっとした出来事が突然起こる作品なので…でも、ちゃんと反応し、お話を追っていただけているんだなと幸せになりました。私も出てるなと…いろいろな角度から、心がバラバラになりながら見て、楽しい時間でした」と続けた。カンヌ映画祭に初参加したことについては「運とタイミングとか…声をかけていただけたことと、自分がやろうと思ったこととか、いろいろな巡り合わせがあっただろうし、1年数カ月、ズレていたらやらなかったかも知れない」と、作品との縁を強調。「そこに(運命の)イタズラが働いて、ここにいるんですかね? 感謝ですけど、現場のスタッフも優れた方達で映像も美しいなと感動した」と笑みを浮かべた。
石橋は、ルイ・ヴィトンのロングドレスにカルティエのハイジュエリー、ディオールのメイクをまとい、レッドカーペットを歩き「夢のように、いろいろなことが、めくるめく目の前で展開し、ただ自分は圧倒されている感じ」と、カンヌ映画祭を全身で浴びた、率直な思いを口にした。「すごい歴史を感じるし、何年も、何十年も続いてきて、いまだにフレッシュな状態で今年はどんな作品に出会えるのかなと(映画祭関係者、観客は)興味を持って見てくださる。仕事を続けてきて良かったなと思いました」と喜びをかみしめた。
公式上映の印象を聞かれると「(観客は)能動的に入り込んで見てくれている感じがして、すごくうれしかった」と笑みを浮かべた。その上で「日本の中でお芝居していると、すごく小さい国なので、どんどん自分の意識も狭い常識の中で収まってしまう」と、日本国内で俳優として仕事をしている中で感じていることを吐露。「そういう中で世界に届く時期が今回で、すごく救われる瞬間だし、ちゃんと届くものだからこそ、日本という小さい国の中で何を表現し、選んでいくのかは責任が発生する。小さくならずに意識を大きくなって、これからも取り組みたい」と、カンヌという大舞台に出て、日本から世界に繋がっていくという感覚を得たからこそ、気を引き締めて演じていかなければならないと決意を新たにした。
◆「ナギダイアリー」近くの山から切り出される木でひとり彫刻を作る寄子(松たか子)。ある日、東京と台湾で建築家として活躍してきた友梨(石橋静河)は、数日間の休暇をとって、別れた夫の姉・寄子のもとを訪れる。都会にはない「ナギ」での穏やかな生活。妻を亡くした寄子の幼なじみの好浩(松山ケンイチ)そして息子の春樹とその親友の圭太--人々との出会いは、日常に小さな揺らぎをもたらしていく。やがて、彫刻のモデルを毎晩つとめるなかで寄子の知られざる喪失に触れ、友梨にも変化が起きていく。



