東映が、高騰するガソリン価格を引き下げる異色プロモーションを展開することが12日、分かった。石油小売り業界最大手の宇佐美グループ(全国420店舗)とタッグを組み、映画「少年メリケンサック」(宮藤官九郎監督、来春公開)の宣伝ステッカーを車に張ると、1リットル当たり5円引きになる。このキャンペーンは20日から8月31日まで実施。広告力でガソリン価格を抑える仰天プロジェクトとして注目されそうだ。

 今回のキャンペーンは宇佐美グループの全国9都市9店舗のガソリンスタンドで実施される。まず、ガソリンを給油。その後、映画「少年メリケンサック」のタイトルロゴ入りステッカーと会員カードを受け取る。次回給油に訪れた際、車に張ったステッカーを店員が確認すれば、店頭表示価格から、レギュラー、ハイオクとも1リットル当たり5円引くという。支払いは現金のみ。1店舗あたり先着100人という制約はあるが、期間中は何度でも割引価格で給油できる。夏休み期間は車を使った帰省や行楽地への移動が多いだけに、ドライバーにとって朗報と言えそうだ。

 映画業界、石油小売り業界でともに初の試みとなるこのキャンペーンは、隔週刊テレビ誌「テレビブロス」の読者投稿がきっかけ。CMなどのクリエイティブディレクターを務める箭内道彦氏(44)が「広告」を題材にした連載を同誌に持っており、読者から原案が寄せられた。

 同映画のロゴデザインも手掛けた箭内氏が配給元の東映に提案したところ、パンクバンドが車で移動しながら全国ライブハウスツアーを行うという作品内容がガソリンと縁が深く、同時に「新しい広告の形として面白い」と快諾。そして、東映の「ガソリン問題が深刻な地方でも展開したい」という要望から、全国展開するガソリンスタンドチェーン最大手の宇佐美グループに白羽の矢を立てた。

 同グループも最大の需要期に割引キャンペーン実施することで、価格高騰によるガソリンスタンド離れに歯止めをかける効果も期待できることもあり快諾。東映が広告費としてガソリン代の一部を支払う形で前代未聞のキャンペーンが成立した。ステッカーを張った車が走ることで東映には映画宣伝となり、宇佐美グループは客足増加を望め、ドライバーは低価格で給油できる。3者が得をするという画期的なキャンペーンとして話題になりそうだ。