テイラー・スウィフトが、ラジオ局のDJだったデービッド・ミューラー氏から、体を触られるセクハラ被害を受けたとして裁判沙汰になっていますが、ハリウッドでは地位を振りかざしたセクハラの横行がかねて問題視されてきました。女優が役をとるためにセクハラを我慢することも多く、泣き寝入りするケースも少なくないといいます。

 そんな中、スウィフトは2013年にコンサート前のステージ裏で記念撮影した際にスカートの中に手を伸ばしてお尻を触られたとラジオ局にセクハラ被害を訴えたのです。ラジオ局はそれを受けて、ミューラー氏を解雇。これに激怒したミューラー氏は「テイラーのせいでクビになった」として300万ドルを求める裁判を起こし、その直後に今度はスウィフトが逆提訴する事態に発展。スウィフトは母親と共に法廷に出廷し、容疑を否定するミューラー氏と真っ向から争う姿勢を見せています。自ら証言台に立ち、「彼は確実に“掴む“行為をした」と証言。裁判ではわずか1ドルを要求し、「すべての女性のために闘う。女性が”ノー“と言えることを示したい」と毅然とした姿勢を貫く姿に多くの女性から称賛の声が上がっています。

 ハリウッドにもスウィフトのように勇気を持って過去のセクハラを告白するセレブも増えており、映画界に根深くはびこる性差別をなくそうという動きも出ています。

 70年代の人気ドラマ「大草原の小さな家」で意地悪ないじめっ子を演じた子役のアリソン・アーングリムは、数年前に現場で6歳の頃から受けてきた性的虐待を告白して衝撃を与えましたが、最近もクロエ・モレッツが15歳の時に年上の共演俳優から「体形を批判されて号泣した」と明かすなど、子役へセクハラや性的虐待も横行していると言われています。

 2015年には「英国王のスピーチ」(10年)や「シカゴ」(02年)などを手掛けた敏腕プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏が、22歳の女性の胸を触るなどした容疑で警察が捜査していることが報じられましたが、スタジオの重鎮によるセクハラは日常的に行われているようです。

 アシュレイ・ジャッドは、「コレクター」(97年)の撮影中に、ライバル映画制作会社の重役からホテルの部屋に呼び出され、シャワーを浴びる様子を見るよう要求されたことを告白。その後、他の女優たちも自分と同じ経験をしていたことを知って驚いたと語っています。また、今やアシュトン・カッチャーと結婚して2児の母でもあるミラ・クニスは、過去に男性誌で映画を宣伝するためにセミヌードになるようプロデューサーに要求されて断ると、「二度とこの業界で働けなくなるぞ」と脅されたことがあったそうです。

 オーディションでビキニ姿を要求されることも珍しくないようです。エミー・ロッサムは、監督からビキニを着てオフィスに来たら役をあげると条件付きオファーがあった過去を告白。ネットフリックスのオリジナルドラマ「Glow:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング」で主演を務めるアリソン・ブリーは、04年から放送されていたドラマ「アントラージュ★オレたちのハリウッド」のオーディションで3行のセリフのために「Tシャツを脱いで」と言われたことを明かしています。Tシャツの下にビキニトップを着ていたため、トップレスにならずに済んだようですが、ビキニ姿でオーディションを受けることになったといいます。

 日本に比べるとセクハラに厳しいと言われるアメリカですが、トランプ大統領までもがマクロン仏大統領のブリジット夫人に対して「良いスタイルをしている」と語ってセクハラ疑惑が浮上するなど、女性への性差別はとても根が深い問題です。特に伝統的な男社会であるハリウッドではまだまだ女性に対する差別が根強く、ギャラなどの待遇でも不当な扱いを受けているといわれており、改善に向けて多くのセレブが声を上げ始めているのが現状です。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)