オスカー女優ジェニファー・ローレンスが、「ハリケーン直撃はトランプ大統領のせい」と語り、気候変動の国際的枠組み「パリ協定」から離脱を表明したドナルド・トランプ大統領を批判して話題になっています。テキサス州に深刻な被害をもたらせたハリケーン「ハービー」に続き、史上最大級の大型ハリケーン「イルマ」がフロリダに上陸する中、「母なる自然の怒り」だとコメント。「気候変動は科学的に証明されており、それは人間の行いの結果。それを無視し続けることが怖いわ。私たちが持っている唯一の声は投票することなのに、投票したら驚く結果になった」と語り、地球温暖化はでっち上げだと主張するトランプ大統領を誕生させたことが間違いだったと語ったのです。

 実力も人気もある若手女優がこのような政治的発言を堂々とすることは、日本では考えられないことでしょうが、ハリウッドの映画スターたちが政治的発言をすることは珍しくありません。今年1月のゴールデングローブ賞授賞式でも、生涯功労賞を受賞したメリル・ストリープが、スピーチで大統領就任直前のトランプ氏を痛烈に批判したことは日本でも話題になりましたが、他にも大統領を直接批判するなど積極的に政治や社会情勢について語るスターがたくさんいます。

 大統領就任式前夜にニューヨークのトランプ・インターナショナル・ホテル・アンド・タワー前で行われた反トランプデモには、ロバート・デ・ニーロ、アレック・ボールドウィン、マーク・ラファロら多くのハリウッドスターが参加。デ・ニーロは、ストリープのスピーチに対して「ハリウッドで最も過大評価されている女優の一人」とツイッターで反撃したことを揶揄し、「今夜、ここに過大評価されている友達と一緒に来られて嬉しい」とスピーチ。その後も、「デ・ニーロのキャリアは最悪だ。オスカーを返すべきだ」などとトランプ氏がツイッターに書き込みそうな内容まで披露して笑いを誘いました。そんなデ・ニーロは大統領選で投票を呼びかけるインターネットのキャンペーンビデオに出演した際には、「愚かでくだらない人間。彼の顔を殴ってやりたい」などとトランプ氏を罵倒して話題になりました。

 ダルフール地方の紛争解決を求める活動をするなど、社会問題にも熱心なジョージ・クルーニーは、8月にバージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義団体と反対派の衝突で女性が一人亡くなくなった事件を受けて、白人至上主義団体やヘイトクライムへの対策のために100万ドルを寄付。インタビューでも「アメリアの大統領としての資格がないことが次第に明らかになってきた」と語るなど、トランプ大統領を繰り返し批判しています。

 大統領選中は民主党のヒラリー・クリントン氏を応援してきたレディー・ガガは、トランプ大統領の自宅があるニューヨークのトランプタワー前で、「Trumpトランプ」の名前にかけて、「Love Trumps Hate(ラブ・トランプス・ヘイト=愛は憎しみに勝る)」と書かれたプラカードを掲げて抗議活動に参加する様子をSNSに投稿。また、大統領就任式の翌日にワシントンDCで行われた女性軽視発言を繰り返すトランプ大統領に抗議する「ウィメンズ・マーチ」には、マドンナやスカーレット・ヨハンソン、ケイティ・ペリー、エマ・ワトソンらが参加しています。

 気候変動の問題に熱心なレオナルド・ディカプリオは、国連気候変動サミットで演説を行った他、気候変動デモにも参加。また、初のオスカーを獲得したアカデミー賞授賞式のスピーチでも「強欲な政治によって気候変動の影響を受ける恵まれない環境を強いられている人々のために動く指導者たちを。子孫のことを考えて行動する政治家を」とスピーチして話題になりました。

 夢を売るのが仕事のスターは、政治的な発言をすべきではないという意見があるのも確かですが、自身の政治的なスタンスを明らかにすることで時には批判を浴びるリスクも含めて彼らは自らの声で語っているのです。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)