日本の刑事ドラマ史の一時代を築いた「あぶない刑事」が、30年の歴史にピリオドを打つ。それが信じられなくなるほど、冒頭から舘ひろしと柴田恭兵が格好いい。舘がバイクにまたがって銃をぶっ放せば、柴田も全力疾走と、60代半ばの2人が演じるおなじみの場面は全く色あせない。

 舘演じるタカと柴田演じるユージが、5日後に定年を迎えることが最大のポイントだ。数多くの危機を乗り越えてきた2人も、確実に年齢を重ねた。そのことを、全力疾走したユージが「はぁ…きつい」と漏らすなど、しっかり見せる。時間の経過…老いを否定せず、ごまかさず真正面から描いたからこそ、11年ぶりにスクリーンに帰ってきても違和感なく今の物語として成立している。

 タカと吉川晃司演じる中南米の犯罪組織BOBの幹部ガルシアが、菜々緒演じる夏海をめぐり意地を張り合う男の戦いは、これまでになかった新たなエッセンスだ。その延長線上で見せる、1人の男としてのタカの顔は見どころ。30年来のファンはもちろん、「あぶ刑事」を知らない若い世代の胸にも、きっと何かが残ると思う。【村上幸将】

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