5月26日付で退団する花組トップ柚香光、相手娘役星風まどかのサヨナラ公演「ミュージカル『アルカンシェル』~パリに架かる虹~」は2月10日に兵庫・宝塚大劇場で開幕。途中休演はあったものの今月8日に再開。宝塚公演は24日に千秋楽を迎え、柚香らは同日、本拠地に別れを告げる。

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劇団屈指の踊り手、柚香が天才ダンサーにふんした今作。黒えんびにシルクハットの王道レビューから、ジャズと多彩なダンスを披露している。作・演出は小池修一郎氏。ナチス・ドイツの占領下のパリを舞台に、レビューの灯を絶やすまいと立ち上がったダンサーの生きざまを描く。

レビュー劇場「アルカンシェル」では、ユダヤ系スタッフが亡命し、人気ダンサーのマルセル(柚香)、看板歌手カトリーヌ(星風)らが残され、一座を率いるべく奮闘。ドイツ軍からジャズを禁じられ、ウインナ・ワルツの上演を命じられる。だが、ドイツ軍の文化統制官フリードリッヒから「戦い疲れたドイツ兵はジャズを求めている」とジャズの上演を望まれる。

フリードリッヒは次期トップに決まった永久輝せあが、繊細な芝居心で表現。フリードリッヒがひかれる歌手は、永久輝の相手娘役に就く星空美咲が演じ、次期コンビが組んだ。

劇場のスター歌手ジョルジュは綺城ひか理が好演、今作退団の帆純まひろはダンサーで活動家を熱演。聖乃あすかは現代歌手でストーリー・テラーを務めた。

一本物ながら、ダンス場面はふんだんにあり、柚香・星風は「ダンサー・コンビ」としての本領も発揮。フィナーレではデュエット・ダンスでも魅了する。柚香は続いてソロで踊り、大劇場の床に触れ、別れを告げるような振りもある。

初日の幕開け後、柚香は役柄と自身を重ね合わせた思いをあいさつにのせた。

「主人公はダンサーのマルセル。マルセルの所属はレビュー劇場アルカンシェル。宝塚大劇場が、この舞台のまま、レビュー劇場アルカンシェルに生まれ変わり、数々の華やかなレビューをご覧いただきました」

続けて「これも、宝塚ならではの舞台」と言い、客席のファンに感謝。「何よりも、皆さまがくださった温かな拍手、そして時折の笑い声、それが本当にうれしく、身に染みる思いでございます」と感謝した。

今作がタカラジェンヌとして最後の公演。「歌、ダンス、お芝居と、精進してまいることが第一と心得ておりますので、千秋楽の日まで、1回1回を大切に」と宣言。「皆さまとご一緒できる一瞬一瞬、1日1日を大切に過ごしてまいりたい」と熱い思いを伝えていた。

宝塚は3月24日まで、東京宝塚劇場は4月14日~5月26日。柚香らは、東京千秋楽をもって退団する。【村上久美子】

今作で退団する花組トップ柚香光(左)と、相手娘役の星風まどか(撮影・村上久美子)
今作で退団する花組トップ柚香光(左)と、相手娘役の星風まどか(撮影・村上久美子)
パリのレビューを守るダンサーにふんした柚香光(右)と、芸術文化に理解を示すドイツ軍人にふんした永久輝せあ(撮影・村上久美子)
パリのレビューを守るダンサーにふんした柚香光(右)と、芸術文化に理解を示すドイツ軍人にふんした永久輝せあ(撮影・村上久美子)
ナチス・ドイツの侵攻から、パリのレビューの灯を消すまいと闘うダンサーにふんした柚香光。後方はストーリーテラーを務めた聖乃あすか(撮影・村上久美子)
ナチス・ドイツの侵攻から、パリのレビューの灯を消すまいと闘うダンサーにふんした柚香光。後方はストーリーテラーを務めた聖乃あすか(撮影・村上久美子)
フィナーレでもデュエット・ダンスで魅了した花組トップ柚香光(左)と、トップ娘役星風まどか(撮影・村上久美子)
フィナーレでもデュエット・ダンスで魅了した花組トップ柚香光(左)と、トップ娘役星風まどか(撮影・村上久美子)