花乃まりあが花組「エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-」の新人公演で、4回目のヒロインに臨む。娘役のあこがれであるタイトルロールのエリザベート役に加え、花組次期娘役トップ就任という慶事が重なった。5年目で今年3月に宙組から花組へ移ったばかり。急展開の流れに戸惑いながら、自分でも知らない「新しい色と顔」を探している。新人公演は兵庫・宝塚大劇場で9月9日、東京宝塚劇場は10月23日。

 キリリとした意志の強そうな顔立ちと裏腹に、自信なさげな語り口だ。

 「(新人公演ヒロインより)少し先にトップ(娘役)のお話をいただきました。お部屋に入ったら、お偉いさんがいらして、しかも入ったことのない部屋で、驚きすぎて、しばらくお返事もできず、先生方に笑われてしまいました」

 めまぐるしい半年だった。3月に宙組から花組へ組替え。6月には新トップ明日海りおのお披露目となった中日劇場公演「ベルサイユのばら-フェルゼンとマリーアントワネット編」でロザリー役に抜てき。次期トップ娘役に内定し、新人公演でエリザベート。

 「メソメソしやすく、環境の変化にも弱くて。(花組異動から)最初がベルばらで大作でしたから、組になじむというより、役のことで頭がいっぱい。明日海さんを中心とした(新生)花組にという熱気に包まれ、私もその波に乗っていこう、と。今は大劇場のお稽古に入って、花組カラーを全身で感じています」

 100年の歴史がある宝塚。5組には個性がある。最も新しく生まれた宙組から、最初にできた花組へ。違いを肌で感じた。

 「国家で言うと、宙組はアメリカ合衆国。各組からメンバーが集まって、自分たちで組を作り上げていった。そんな誇りを上級生の方が持っていらっしゃって、ある意味、自由。花組はやはり、日本という感じです。宝塚の伝統、一番古い組であり『花組の男役』『花組の娘役』と、プライドを持っていらっしゃる」

 自身を「歌もダンスも何もかも、歴代のトップさんに比べて未熟」と厳しい目を向ける。一方で、心に適度な“余白”を持てる性格も、強みだ。

 「小学校低学年のとき、稔幸さんのベルばらを見て宝塚を好きになった。本格的なレッスンを始めたのは中学から。スローペースで、マイペース(笑い)。アピールできる自分の魅力が分からない」

 そんなとき同期から「自分の魅力が分かっていないところがいい」と言われ、気が楽になった。

 「今のまま謙虚に努めて、自分でも知らない新しい顔を見つけようって。その分、伸びしろはあるんじゃないかなと思っています」

 新トップ明日海からはうれしい助言があった。

 「明日海さんも(月組から花組へ)組替えを経験されている。私なんかよりもっともっとたくさんの葛藤、苦労がある中で、私に『しっかり(現トップ娘役)蘭乃(はな)さんの背中を見て、成長して、一緒に頑張っていこうね』って、本当に優しく言ってくださりました。どんどん新しいことを吸収していきたい」

 おっとり娘の芯は強い。トップ明日海を支え、新生花組を引っ張る覚悟はできている。【村上久美子】

 ☆花乃(かの)まりあ 10月12日、東京都生まれ。10年4月、月組公演「スカーレット・ピンパーネル」で初舞台。宙組配属。12年8月「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」で新人公演初ヒロイン。13年9月「風と共に去りぬ」新人公演でもヒロイン。新人公演ヒロインは今回が4回目。今年3月、花組へ組替え。現トップ娘役蘭乃はな退団にともない、11月27日付で花組の次期トップ娘役に就任予定。愛称「かのちゃん」。