大みそかのNHK紅白歌合戦で白組司会を務めた嵐の相葉雅紀さんが、放送後、各社の取材に応じた際のコメントです。グループで5年連続の白組司会を経験していますが、今回の進行台本にはかなり手を焼いたよう。「すごい詰め込んだ紅白という気がした」と振り返りました。

 相葉さんがポンコツかどうかはさておき、今回の紅白は実際に演出過多だった気がします。4時間半の間に、ざっくり数えただけでも「座席にたどり着けないタモリ&マツコ」の中継7回、「渋谷に向かっているゴジラ」の中継&VTR5回、局内各所からのお笑いリポート4回。都庁やロンドンからの歌の中継も多く、ステージから離れがち。司会者にも、集中してステージに臨みたい歌手たちにも試練でした。

 振り返れば、今回はリハーサル取材の現場も異例続きのドタバタでした。例年29日から始まるリハーサルが28日からに前倒し。矢島良チーフプロデューサーは「N響のコンサートが例年より1日早く終わったため」と説明しましたが、1日増えたことで「緊張感に欠ける」と感じた記者は多くいました。個々の音合わせ、司会者面談、通しのリハーサルをたった2日で行うミラクルが紅白のすごみ。再チェックが必要な場合を除き、歌手も音合わせは一発できめるのが常でした。しかし、今回は1時間近くリハをしていた組もあり、文字通りのドタバタでした。

 初めて2階席にステージを設けたことも、リハの流れに影響しました。1階席から回廊状につながっており、2階席を使う出演者は4回5回と行ったり来たり。リハを終えた歌手たちを待つ取材エリアでは、仕切るNHK職員たちがパイプいすを持ち込んで座って過ごす展開。活気と緊張感みなぎる紅白の現場では見たことがない光景で、ベテラン記者たちは「NHKらしくない」と目が点。調べるはずのデータが最後までアナウンスされないとか、らしくない混乱も見受けられました。

 ジャニーズ勢の囲み取材が29日に固め打ちになるなど、SMAP不在の混乱も特徴的。演出過多も、昨年より出場歌手が6組少ないことを考えれば納得で、最後までSMAP出演の可能性を探ったNHKの苦労がしのばれます。

 個人的には、もっと歌に集中した紅白を見たかったのですが、好みは人それぞれ。白羽の矢を立てた人を「ポンコツ」と反省させてしまったNHKの罪深さはさておき、平均視聴率は昨年を上回る40・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)でした。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)