21日に膵臓(すいぞう)がんで亡くなった歌舞伎俳優坂東三津五郎さん(享年59)の葬儀・告別式が25日、東京・青山葬儀所で営まれた。弔辞は尾上菊五郎(72)らが読み、一般ファンを含め約5000人が参列した。

 三津五郎さんが信頼した先輩菊五郎はユーモアと愛情あふれる弔辞で参列者の涙と微苦笑を誘った。しめやかな弔辞のトーンが最後で変わった。城めぐりなど多趣味なことに触れて「『姫路城が好きだ』『彦根城が好きだ』と言っておりましたが、ホステス嬢やキャバクラ嬢も好きでした。どうか、そちらの世界に行ったら、ネオン街で、いい店を探しておいてください。私が行ったら、どうぞいい店を紹介してください。お願いいたします。本当に今までお疲れさまでした。ありがとう」。そう言った後、遺影を見つめた。若いころにもてた三津五郎さんのプライベートをよく知る菊五郎らしい粋な弔辞だった。

 三津五郎さんとは、1カ月前に病状の経過や仕事の話をした。「『夏に復帰したい』と前向きな言葉をもらい、『風邪をひかないように』と言ったのが最後だった。残念です」。若手育成に尽力した業績を挙げて「ありがとうと言えば、若い人をかわいがって育ててくれた。君のまいた種が、これから3年後、5年後、10年後に花が咲き、実をつけて、これからの歌舞伎をしょって立ってくれるだろうと楽しみです」と称賛した。

 後ろ盾となる父を亡くした坂東巳之助(25)についても、「先輩としてきっと立派な役者にしてみせます」と約束。「大和屋(三津五郎家の屋号)をしょっていってもらいたい」と期待をかけた。