ポールがロックの聖地に再び-。来日中のポール・マッカートニー(72)が28日、東京・日本武道館のステージに立つ。

 1966年にビートルズの一員として公演してから約半世紀。伝説の地で開かれるライブに、ファンの期待は高まっている。

 ▽歴史

 ポールの武道館公演は、長らくファンのかなわぬ夢だった。ビートルズ解散後、3度企画されたがいずれも中止。バンド「ウイングス」時代、75年は入国の見通しが立たず断念、80年には成田空港で大麻所持の現行犯で逮捕された。2014年は体調不良で、全公演が中止となった。

 今回の歴史的なライブを目に焼き付けようと、最高で10万円(SS席)のチケットは飛ぶように売れた。8万円(S席)のチケットを手にした50代の女性会社員は、80年と14年の武道館公演も入場券を買った筋金入りのファンだ。「バーゲンや旅行に行かずに節約した。ワクワクしすぎて、終わったら“ポール・ロス”になるかも」

 ▽世界

 ビートルズの公演で武道館が会場に選ばれたのは、当時の日本にはほかに大規模なホールがなかったためだ。「武道のための神聖な場所を使うべきではない」という批判もあったが、ビートルズを皮切りにエリック・クラプトンら国内外の一流アーティストがライブを開くように。武道館は、ロックの聖地“ブドーカン”として世界的に有名になった。

 デビュー15周年のコンサートを武道館で開いたシンガー倉木麻衣は「(ホールの形状が)丸くなっているのでボーカルの声やバンドのサウンドが響く。一体感も感じられ、ライブをしている手応えがある」と、その魅力を語る。

 ▽思い出

 ポールにとっても武道館は特別な場所のようだ。招聘(しょうへい)元のキョードー東京によると、中止になった14年の公演は、通常のステージとは異なる曲目を演奏する予定だったという。ポールは「僕たちが日本で初めて演奏した舞台。僕にとっては、いつまでも大切な思い出の場所なんだ」というコメントを出した。

 ビートルズをインタビューした音楽評論家の星加ルミ子さんは「『イエスタデイ』や『ペイパーバック・ライター』を演奏し、当時の雰囲気を再現してくれれば。『少し年は取ったけれど、昔のポールと変わらないな』と思う人もたくさんいるのでは」と話した。