【カンヌ(フランス)18日=村上幸将】深津絵里(42)と浅野忠信(41)が、カンヌ映画祭ある視点部門に出品された主演映画「岸辺の旅」(黒沢清監督、今秋公開)公式上映から一夜明け、日刊スポーツの単独取材に応じた。深津は初のカンヌで味わった感動を素直に吐露。カンヌ映画祭に参加経験のある浅野は、丸刈りで登場し縁のある同映画祭への凱旋(がいせん)を誓った。

 深夜の上映後、深津と浅野は劇場ロビーで観客に囲まれ拍手を受けた。そのまま即席撮影会がスタート。カンヌ5度目の黒沢監督も「興奮した」と感激した。深津は前夜を振り返り、少女のように目を輝かせた。

 深津 カンヌはカンヌでしかなく、比べるものは何もない。来ないと分からない。全部が映画のためにある街…不思議。世界は広いなと思う。この体験、感覚を体の中に取り入れる経験が出来て本当に良かった。

 頭を丸めた浅野も、少年のような笑顔を浮かべた。

 浅野 ここは何なんだと…本当に映画が盛り上がる。縁があって、黒沢監督の03年「アカルイミライ」で来て「モンゴル」(07年)製作も05年のカンヌ映画祭で発表した。「撮影して帰ってくる」と言ったのに、帰らずオスカー(米アカデミー賞外国語映画賞にノミネート)に行って(10年後の今回)帰ってきました。

 劇中では妻と幽霊になった夫が互いに好きでいながら、すれ違う。微妙な掛け合いを、観客の女性たちは食い入るように見詰めた。

 深津 愛は失ってはいけない、すごく美しいこと。でも日常では、そばにいて大切にしなきゃいけないのに誠意がなくなったり。幸せとは違うかもしれないけど、思い続けられるほど人を愛せるのはうらやましい。

 浅野 死んだ夫が妻と向き合い浄化される物語。死者にも思いは届く。映画も愛がないと広がらない。

 男女の愛を語った2人は、再びカンヌ愛を語った。

 深津 映画への取り組み方、見方が違ってきそう。カンヌの魔力、人を震え上がらせるようなエネルギーは1度ではつかみきれない。もっと知りたいけれど、来たいと思って来られないところなのもよく分かる。運もすごくある気がする。

 浅野 帰ってきますよ。

 深津 そう言うと、また遠回りするのでは(笑い)

 浅野 結果、13年後になったり(苦笑)

 深津 そう思わせるカンヌって何なんだろう…怖い。でも夢は大きく!!

 ◆「岸辺の旅」 ピアノ教師の瑞希(深津)は、3年前の失踪から帰宅した夫優介(浅野)から「俺、死んだよ」と告げられる。幽霊の優介から3年間に世話になった人を訪ねる旅を提案され、同行する中で、深い愛や情を感じるとともに知らなかった一面も知る。