和歌山電鉄貴志川線貴志駅(和歌山県紀の川市)駅長の雌の三毛猫「たま」の社葬が28日、同駅で執り行われた。

 人間の約80歳に相当する16歳2カ月で天国へ旅立ったたまと最後のお別れをしようと、ファンら約3000人が参列した。

 葬儀委員長の同社の小嶋光信社長はたまとの出会いを振り返りながら「和歌山電鉄と全国の地方鉄道の救世主として神様の意を受けてこの世に現れたかのような、たまちゃんと一緒に働けたことを誇りに思っています」と弔辞を読み上げた。

 参列した和歌山県の仁坂吉伸知事は「観光のスーパースターとして国内外から絶大な人気を誇り、和歌山県の観光振興に大いに貢献してくれた。県民の心に明るさとあたたかさをもたらしてくれた」とあいさつした。名古屋市から来た会社員中田圭治さん(46)は「年に数回、たまに会いに来るのが楽しみだった。愛くるしかった」とうっすらと涙を見せた。

 たまは鼻炎のため5月から同県岩出市内の動物病院で療養していたが、22日午後7時すぎ、死んだ。死因は急性心不全とみられる。死ぬ前日に同社の小嶋社長が見舞いに訪れた際、寝ていたたまは立ち上がって、元気な声で「ニャ~」と鳴いたという。それが最後の姿となった。

 たまは貴志駅に隣接する売店で飼われていた。駅長に就任するきっかけは06年4月、南海電鉄から赤字のローカル線を引き継いだばかりの和歌山電鉄の小嶋社長に飼い主が「たまを駅舎に住まわせて」と頼んだ。「この子は駅長だ」とひらめいた小嶋社長は07年1月、民間の鉄道会社で全国初となる「猫の駅長」に任命した。

 愛くるしさと物珍しさで全国から観光客が訪れ、ローカル線は一躍人気スポットに。写真集などグッズの売り上げでも貢献し、13年1月に同社の社長代理に昇進した。たまの貢献度は高く05年度に約192万人だった乗客数は、14年度には約227万人まで伸びた。

 小嶋社長は「名誉永久駅長を命ず」と最後の辞令を読み上げ「これからも『たま大明神』として和歌山電鉄はじめ世界の地域公共交通を守ってください」と涙声で話した。