長渕剛(58)が、8月22日夜から静岡県富士宮市の富士山麓で開催する「10万人オールナイト・ライヴ2015 in 富士山麓」。この一大イベントに向け、さまざまな角度、証言から連載する。

 長渕剛が富士に立つまであと数日。長渕だけでなく、10万人を迎える会場や、その周辺も急ピッチに準備が進む。第3章「カウントダウン」は、観客を支える「食」をテーマに開始する。

 オールナイトライブは観客の食事の確保が重要ポイントになる。ライブは9時間。途中数回の休憩が予定されており、その間に空腹を満たすことになる。さらに、開演数時間前に入場開始、終演後も規制退場は数時間かかるため、滞在時間は15時間以上になる。

 単純計算で10万人が3回食事を取るとして30万食。これを確保するため、全国から出店希望を募り、審査の結果、100以上の出店が決まった。食の野外イベントとして定着する「B-1グランプリ」の昨年の出展団体は59。単純比較はできないが、食の祭典を上回る規模になる。

 メニューは海外を含む各地の味が客席を囲むように並ぶ。地元富士宮市からはニジマスやシラスなど名産品とともに、06、07年B-1グランプリ連覇の「富士宮やきそば」が5店。「第1回富士宮やきそばグランプリ商工会議所会頭賞」(03年)の実績を誇る、「鉄板焼 ちゃん」を2店舗経営する藤原央(39)は力が入る。単純計算で30万食を100店で割ると1店平均3000食だが。

 藤原 自分は5000食を準備しますよ。「売り切れで終わりです」なんて言うのは情けない。もし余ってもお店で使えるから。こんなビッグイベントは人生で最初で最後。万全の態勢でいきます。

 平日の焼きそば販売数が2店舗で約100食だから、その50倍を用意する。策はある。2店の従業員5人に、当日はアルバイト5人を加えて10人態勢にする。3人が焼く担当で、7人が販売と盛りつけ役だ。用意する鉄板は4台。担当より多いのには訳がある。

 藤原 焼きそばを作り続けていると、鉄板が冷める。そうすると水分が多すぎて麺がビチャビチャになっちゃう。だから、使わない1台を常に温めておくローテーションを組むんです。

 富士宮やきそばの魅力は、麺のコシの強さと肉かすのコク。そこに、経験もプラスして来場者にインパクトを残したい。

 藤原 富士宮名物には焼きそばだけでなく、たくさんの観光名所もあるんです。高速道路を下りたら、富士五湖に向かう通り道で通過するだけでなく、ぜひ寄っていってほしい。

 一夜限りではなく、麺のように長く、腰を据えた付き合いを求めている。(敬称略)【特別取材班】

 ◆静岡グルメの代表格「浜松ギョーザ」にちなみ「長渕剛公認 ふもとっぱら10万人餃子」が会場で限定販売される。昨年末、浜松を拠点にするFM局K-mixの番組に長渕が出演した際「ここでしか食べられないギョーザが食いたい」と、静岡名物の桜エビ、お茶の風味が利いたオリジナル商品を提案。地元業者が1万個以上を試作、2度にわたる長渕の試食を経てオールナイトライブに間に合わせた。長渕は「かんだ瞬間に強烈に主張が来る」と満足している。