ファンキー加藤(36)の初主演映画「サブイボマスク」(門馬直人監督、来年初夏公開予定)の撮影がこのほど、大分県杵築市でクランクアップした。加藤は「自分の中で間違いなく一番濃密でプレッシャーがあって。でも一番思い出深い日々になりました」。スタッフから大きな拍手を送られると、充実感あふれた表情を見せた。

 同県に約1カ月滞在。自宅のある東京に1度も戻らなかった。「不安はありましたが、結果的にこっちにずっといられて良かった。音楽のことは、ほぼ頭から外しました。そうしないと失礼」と演技への集中に注力した。撮影現場以外でも、主人公の口癖「おうっ」が出るほど、すっかり役が染みついた。

 歌手ではあり得ない体験の連続だった。特に印象に残った撮影は泣く場面だったという。「一番心配でした。怒る、笑うはステージ上で表現してきたものだけど、スタッフさんやカメラさんの前で泣く表現をするのは、すげえ未知の領域だったんですよ。でも役に入り込めていたので、涙がボロンボロン出てきて、自分でも驚きました」。

 本格的な俳優業に初進出にして初主演。重圧のあまり、撮影前日は眠れなかった。撮影が始まると、食事がのどを通らず、やつれてしまい、周囲から心配された。「気は使っていました。よそ様という感覚がずっとあったんです。みんなは迎え入れてくれたんですけど、初めての本格的な演技が主演ですみません、本業じゃないのにすみません、といった気持ちはずっとありました」。

 苦労した分、得たものは大きかった。「もう1つの人生を疑似体験しているようで、すごく刺激的で面白かった。またお声が掛かれば、前向きにやっていきたい気持ちが強くなりました」。挑戦したい役や作品もある。「例えば時代劇、侍を演じてみたい。ちょんまげは似合うと思うんです。すごい昭和顔なんで。NHK大河ドラマってことですかね。頑張ります!」。重圧から解き放たれた表情はすがすがしく見えた。【近藤由美子】

 ◆映画「サブイボマスク」 町はずれの大型ショッピングセンターが繁盛する一方、駅前のシャッター商店街は閑古鳥が鳴く。商店街の活気やにぎわいを取り戻すため、商店街の人々のやる気を奮い立たせようとする男がいた。男は街の青年団に所属する何でも屋の店員。熱血バカだが、街の復活を信じて歌い続けることで「人おこし」を始める。実写映像に加え、主要キャストが見た世界をアニメで表現する場面もある。