第28回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が7日、決定した。

 作品賞は「ソロモンの偽証 前篇・事件、後篇・裁判」が受賞した。成島出監督(54)は「賞を取れるとは思っていなかった」と驚いた。

 作家宮部みゆき氏の原作は文庫本6冊で計2000ページの超大作。映像化すると4~5時間の尺は必要で、前後編2作となった。中学生による校内裁判がクライマックス。動きが乏しい場面を、演技経験の少ない俳優たちで、どこまで見せられるかは未知数。映画賞の対象になるなど想像もできなかった。「中学生の殺しや自殺をなくしたかった」という強い気持ちで撮影に入った。

 応募1万人以上のオーディションで新人の藤野涼子(15)ら33人を選んだ。「日本映画を背負う役者に育てる」という信念で演技指導は厳しかった。「やったことがないことに挑戦する」が合言葉だった。作品賞という思わぬ形で苦労が報われた。

 ◆成島出(なるしま・いずる)1961年(昭36)4月16日、山梨県生まれ。04年「油断大敵」で監督デビュー。11年「八日目の蝉」が日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞など10冠獲得。

 ◆ソロモンの偽証 前篇・事件、後篇・裁判 藤野涼子は雪の積もった校庭で同級生の遺体を発見。警察が自殺と結論づけた中、殺害されたとする告発状が届く。学校、メディアを交え、臆測が飛び交う中、涼子は校内裁判を開く。

 ◆作品賞・選考経過 「ソロモンの偽証」が、決選投票で「海街diary」に競り勝った。「圧倒的なエンタメで、面白くまとめあげた。経験の少ないキャストを使いながら一部のスキもない」(木下博通氏)、「よくあれだけの原作をまとめた」(寺脇研氏)などの声が上がった。