女優草刈民代(50)が11日、大阪市内で出演するミュージカル「グランドホテル」の会見を行った。東日本大震災の発生から5年の節目に舞台への思いを新たにした。

 5年前の11年3月15日。草刈は夫の周防正行監督と大阪にいた。主演映画「ダンシング・チャップリン」(周防正行監督)の公開を控え、PRのために大阪入り。会見直前に福島原発事故により神奈川県で放射能が検出されたニュースを知った。動揺し、会見では涙ぐんだ。いまでもあのときは記憶は鮮明だ。

 草刈は「(原発の)放射能漏れの事故があったとき、本当にぞっとした。気持ちがどんどん落ち込んでいった。こんなこと(映画のプロモーション)していていいのかと」と当時を振り返った。日本中が不安にさいなまれる中、周囲からは「こういうときだからこそ映画を上映する意味がある」と励ます声もあった。

 震災をきっかけに表現者として作品をつくる意味を深く考えた。いきついた結論は「切実に演じている姿が人の励みになり、刺激になる。中途半端が一番ダメ。全身全霊をかけてみなさんの前に立つこと」だった。

 今回の「グランドホテル」はドイツのベルリンの高級ホテル「グランドホテル」を舞台に、そこで行き交う人々の明暗を描いた群像劇だ。ヴィッキー・バウムの同名小説をもとに1932年、グレタ・ガルボとジョン・バリモア主演で映画化され、アカデミー賞作品賞を受賞した。

 草刈はバレリーナ、エリザベッタ役を務める。年齢ゆえの衰えに悩み、愛のない人生にも絶望している。最後の舞台ではカーテンコールもなかった。09年に36年間続けてきたバレリーナを引退した草刈は「引退間際の踊れなくなっていくという葛藤は自らの経験と重なり合うところもあります。その経験をリアルに生かして演じたい」と意気込んだ。

 東京公演は赤坂ACTシアター(4月9~24日)、名古屋公演は愛知県芸術劇場(4月27、28日)、大阪公演は梅田芸術劇場(5月5~8日)。