アメリカの人気ドラマの特徴は、何シーズンも続く長いヒット。たとえば、1994年に始まったコメディー「フレンズ」は10シーズン(全236話)続いた。より最近だと、2015年に15シーズンで幕を閉じた犯罪捜査ドラマ「CSI:科学捜査班」や、現在11シーズン目に突入しているホラー・サスペンスドラマ「SUPERNATURAL」がある。このようなヒット作誕生の裏には、脚本がドラマになるまでの険しい道のりがあった。

 ドラマの制作は、ABC、FOXなどのネットワーク局やHBOなどのケーブルテレビ局に数多くの脚本が売り込まれるところから始まる。それぞれの局が、ヒットが見込まれると判断したいくつかの脚本について「パイロット」と呼ばれる一話目の制作を決める。制作を仕切るショーランナーやプロデューサーが雇われ、彼らがオーディションを通してキャストを決めると、いよいよ撮影開始。綿密な編集作業まで終わると、パイロットの完成である。

 このパイロットを局の人々が見て、どれをドラマとして放送するか決定する。選ばれなかったものは捨てられるか、棚上げされる。米情報誌「The Hollywood Reporter」によると、主要5大ネットワーク(ABC、CBS、Fox、NBC、The CW)が1年に注文するパイロットは合計で約100本。そのうち実際に放送されるドラマになるのは半分以下だという。残り半分は、1話目の制作がむだになってしまうのだ。

 この厳しさの理由の1つは、限られた放送の枠を人気ドラマの続編が埋めるということだろう。たとえば、「SUPERNATURAL」や「ヴァンパイア・ダイアリーズ」を抱えるネットワーク局The CWは、2015年から2016年にかけて16のドラマを放送したが、そのうち新しいシリーズは3つだけだった。皮肉にも、成功してシリーズ化する作品が多いほど新作ドラマのチャンスは減ってしまうのだ。

 さらに、ドラマ制作は今、変化の時代を迎えている。ドラマや映画の配信サービス「Netflix」が、ビッグデータの活用を進めているのだ。Netflixは利用者の情報を分析することによって、どのようなドラマに需要があるか判断し、その結果にもとづいて独自のドラマを制作し始めている。脚本の売り込みから始まっていたドラマ制作の形を大きく変えることになるだろう。

 1年間にテレビ局に売り込まれる脚本の数は1000本以上。つまり、ドラマの形で最終的に視聴者に届くのはわずか数パーセントである。めでたく放送にいたっても、視聴者数が伸びないとシリーズ化されなかったり、場合によってはシーズンの途中で打ち切りになったりすることも。このような厳選のプロセスがあるからこそ、10シーズン以上も続くヒット作が生まれるのだろう。そして視聴者の需要に直接応えるドラマ制作が始まった今、さらなるヒット作の出現に期待したい。【ハリウッドニュース編集部】