12日に亡くなった演出家蜷川幸雄さん(享年80)の通夜が15日、東京・青山葬儀所でしめやかに営まれた。「世界のニナガワ」と呼ばれた名演出家だけに、芸能界、劇場関係者、政財界からファンを含め、約1500人が参列した。葬儀・告別式は16日正午から、同所で営まれる。

 蜷川さんの作品に出演した俳優らは悲しみに暮れながらも、蜷川さんにしかられたことを振り返った。

 舞台「ロミオとジュリエット」や「海辺のカフカ」に出演した鈴木杏(29)は「ことあるごとにたくさんしかられました。最後のゲキは『杏ちゃんの動きが悪い』でした。蜷川さんが求めるものに追いつこうと必死でした。これからも怒ってほしいと思ってました」と言いながら何度もハンカチで涙をぬぐった。舞台「ムサシ」に出演した勝地涼(29)は「蜷川さんの仕事じゃない時も、蜷川さんだったらどう怒られるんだろうと向き合ってきたので、亡くなっても向き合っていくと思う」と涙を流した。

 舞台「下谷万年物語」に出演したAAA西島隆弘(29)は「『音楽をやめて俳優の世界に来い』と言われたことが印象的でした。言葉はもう届かないと思うけど、もっとしかってほしかった」。舞台「近松心中物語」に出演した本田博太郎(65)は「平幹二朗さんの代役に抜てきしてくださった命の恩人です。新人だったから、しかられる一番の的でした。愛情と叱咤(しった)激励に心の底から感謝です」。「ヴェローナの二紳士」に出演した溝端淳平(26)は「もっとしかってほしかったです。成長した姿をお見せしたかった」と唇をかみしめた。