宝塚歌劇で専科を経てトップに就いた苦労人、星組の北翔海莉(ほくしょう・かいり)と相手娘役・妃海風(ひなみ・ふう)のサヨナラ公演「桜華に舞え」「ロマンス!!」が26日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。

 最後の演目で西南戦争の仕掛け人、桐野利秋を演じた北翔は星組の後輩に、薩摩隼人(はやと)の身上「泣こよかひっ飛べ!(泣くぐらいなら勇気を持って飛んでしまえ!)」の言葉を残して去る。

 「人斬り半次郎」と呼ばれた薩摩下級藩士の出ながら、西郷隆盛に心酔。新政府軍の要職に就いたものの西郷とともに下野した。西南戦争の首謀者として語り継がれる桐野には負のイメージもあるが、今作では薩摩男子の心意気を体現した男として描かれた。北翔の最後のセリフは「泣こよかひっ飛べ!」。自らの思いを重ねて熱い演技を見せた。

 劣等生入学から研さんを重ねて21年。頂点へ上り詰めた北翔は役柄に自らを重ね、鹿児島の道場を訪ねて剣を学んできた。

 「ボロボロになって、たとえば『Endless SHOCK』の堂本光一さんが階段落ちするようなイメージ」を抱き、殺陣場面のけいこに臨んだ。心情面でも極限まで追い込んで役を作り上げてきた。

 昨年5月、専科から異例のトップ就任で星組へ入り1年余り。星組メンバーに舞台への取り組み方を背中で語ってきた。歌、ダンス、芝居にたけた実力派トップは、最後に組のメンバーに「次のステップへ向かう勇気」を伝えたかったという。

 北翔の思いを組んだ相手役の妃海は、会津藩の娘役で、なぎなたを手にした戦闘場面にも挑戦した。次期トップの2番手、紅ゆずるも北翔に心意気に応え、北翔演じる桐野の親友ながら後に袂を分かつ苦悩の男を熱演している。

 ショーは、北翔が敬愛するレビューの第一人者、岡田敬二氏の19作目になる新作だ。「宝塚102年の歴史の中で、宝塚でしかできないレビューを」と岡田氏。華やかさだけを追うのではなく、落ち着き、安定感も感じさせる王道といえる。

 北翔・妃海のトップコンビのデュエットのほか、星組メンバーは男役スター礼真琴(れい・まこと)、七海(ななみ)ひろきが女役にふんし、それぞれ北翔、紅と組むダンスナンバーにも挑戦している。

 兵庫・宝塚大劇場は10月3日まで、東京宝塚劇場は10月21日~11月20日。北翔、妃海らは今公演の東京公演千秋楽で退団する。