上方落語協会の桂文枝会長(73)が、06年に上方では戦後初の落語定席としてオープンさせた大阪市北区の天満天神繁昌亭は15日、開館10周年を迎え、文枝は近隣の商店街を約1時間半かけて、初代桂春団治ゆかりの赤い人力車に乗り、練り歩いた。

 商店街は日本一長いアーケード商店街として知られる「天神橋筋商店街」。本来ならまだシャッターが閉まっている午前8時半、吉村洋文大阪市長らも駆けつけ、あいさつ。吉村市長は、文枝会長に「今年1年、振り返ってどうですか」と投げかけた。

 文枝は、今年初めに不倫騒動もあり「いや、今年は振り返りたくないですな」と苦笑。集まった観衆を笑わせて出発した。

 お練りは大にぎわいで、予定時間より遅れ、大阪天満宮への到着時間が迫り、最後はほぼ駆け足。同行していた桂きん枝(65)は「これ、お練りやなく、“お走り”やがな」と言いながらも、予想を超える地元の歓迎に相好を崩した。

 文枝も人力車から手を振り、「今年1年」こそ、振り返りたくないと苦笑したが、繁昌亭前に着くと、感極まった様子。鏡開きから振る舞い酒も行い「あっという間の10年でした」と振り返った。

 繁昌亭開館の前年、05年3月に師匠の5代目文枝が亡くなり、昨年3月には桂米朝さん、今年1月には3代目桂春団治さんが死去した。文枝は「四天王全員が鬼籍に入られて、10年の節目を迎えるというのも、これは次世代へつないでいきなさいという、その責任を感じます」と話した。

 06年の開館から落語ファンに愛され、13年8月に入場100万人を突破。8月末までに、約140万人を動員している。

 戦後、絶滅寸前だった上方落語は、米朝さん、春団治さん、文枝さん、そして故6代目笑福亭松鶴さんの4人が中心になって、再スタート。今では、上方落語協会の会員数は254人を数える。

 文枝は「開場10年、それもすべては師匠たちのおかげです」と言い、先代の師匠らに繁昌亭が開場10年を迎えたことを報告してきたという。

 文枝は、7月の日本導入から人気となっている「ポケモンGO」に触れ「ここ(繁昌亭)も名所のひとつとして、メッカに入れてもらおうと思っていたら、すでに入ってたんで、それはうれしかった」。意外な形で、繁昌亭の定着に手ごたえを感じたと明かした。