女優高畑淳子(61)が24日、東京・北千住のシアター1010(せんじゅ)で開幕した主演舞台「雪まろげ」のステージに立った。先月下旬、長男で俳優の高畑裕太(23)が強姦(ごうかん)致傷容疑で逮捕される事件が発生。裕太は不起訴処分となったが、母親として謝罪会見も開いた。この日は観客の声援に涙ぐむ場面もあった。

 芝居が終わるとカーテンコールが2度起きた。目を潤ませた高畑は「ありがとうございました!!」と声援に応え、何度も頭を下げた。2度目のカーテンコールはスタンディングオベーションで、客席から「頑張ってください!」と声が飛んだ。高畑は共演者とつないだ手を上げ、700人で満員になった劇場を見渡し感極まった。

 この日は開演約3時間前に劇場入りした。舞台上で行ったおはらいでは、出演者を代表して玉串を奉納した。関係者によると、淡々と舞台に備えている様子だったという。

 「雪まろげ」は故森光子さんの代表作。温泉芸者の夢子がついた小さなうそが騒動を巻き起こす人情喜劇だ。終演後、都内在住の女性客は「高畑さんは元気そうで安心しました。やはりお芝居はうまい。森さんの後を継いでほしい」、2カ月前からチケットを準備していた70代女性は「お芝居に入り込んだので(事件のことは)まったく考えませんでした」。一方で「悩みを隠しているんだと、どうしても考えてしまった」と話す観客もいた。

 裕太の逮捕後に行った謝罪会見で、今回の舞台出演を含む女優業について「仕事を続けていくのが自分の贖罪(しょくざい)」と答えたことに否定的な意見もあった。座長として作品をPRする時期に何もできなかった。裕太が入院中の病院と稽古場を行き来する日が続いたこともあった。さまざまな逆風があったが、初日昼の部は完売、夜の部もほぼ完売となった。

 所属事務所関係者は、高畑について「温かいお客さんでホッとしていたようだった」と話した。事件後に体重は5~6キロやせてしまったが、こけたほおも戻りつつあるという。

 終演後、報道陣の問い掛けには答えず、劇場を後にした。幕は開いたばかりだ。同劇場で25日まで上演後、28日から東京・日比谷のシアタークリエで上演し、全国巡演も控えている。【小林千穂】