元タレント上岡龍太郎さん(74)が30日、大阪府八尾市内で営まれた弟子のお笑い芸人テント(享年65=本名・三浦得生)さんの葬儀に参列した。ぼうぜんとした表情のまま、いまだ最愛の弟子の急死を受け入れられない様子で、出棺を見送った。

 上岡さんは前日29日の通夜にも足を運んだ。関係者を通じて「突然のできごとで、衝撃的でぼうぜん自失としております。さすがの私も言葉がございません」とのメッセージを寄せたが、この日も沈痛な表情は変わらなかった。その意味を、同じく弟子のぜんじろう(48)が代弁した。

 「僕、あんな落ち込んだ師匠、見たことないです。テント兄さんは、僕ら、うらやましいぐらいのかわいがられ方してましたから。そのこともあって、僕らなんかよりもっともっと、悲しいと思う。心の中は、大変なことになってるんやろなって思います」

 もともと、テントさんは腹話術師の故川上のぼるさんに弟子入りし、芸人の世界に入った。その約10年後、ひょうひょうとしつつも筋を曲げず、独特の芸風を貫いていたテントさんを、上岡さんがスカウトする形で師弟関係が出来上がったものだった。

 ぜんじろうはその様子を「師匠(上岡さん)の方から『あなたの師匠にしてください』言うて、兄さんが弟子になってますからね。そらもう、テント兄さんのこと、うらやましかったですよ、ほんまに…」と、当時を思い出すように話した。

 「しゃべくり」で一代を築いた上岡さんから「言葉を失わせた」弟子の急死。出棺時には上岡さんに寄り添い見送ったぜんじろうだったが、あまりの憔悴(しょうすい)ぶりに、声もかけられなかった。

 「今年の正月も、師匠の家に集まったんです」

 上岡さんへの新年あいさつの席で、ぜんじろうとテントさんは、初の兄弟会を開こうと意見が一致。上岡さんも満足そうに聞き入っていたといい、第1回の兄弟会を8月18日に、大阪・福島の「さばのゆ温泉」で開いたばかりだった。

 ぜんじろうによると、客は30~40人程度で「また、2回目もやろう言うて。で、どんどん規模、大きくなったら、師匠も(客席に)呼んで見てもらって、舞台から師匠をいじろうって言うてた」という。

 そんな兄弟弟子が力を合わせた恩返しも、もうかなわなくなった。ぜんじろうは「せやから、ほんま、師匠はまだ(テントさんが)亡くなったという現実を受け入れられてないと思う」と上岡さんを思いやった。