俳優水谷豊(64)の主演映画「相棒-劇場版IV-首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断」(橋本一監督)が11日、封切られた。

 配給の東映は同日夕方に、過去作との初日の動員対比で、興行収入(興収)50億円を狙える好スタートだと発表した。具体的には

 (1)興収21億3000万円を記録した14年の前作「相棒-劇場版3- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ」と比較した観客動員数約190%で

 (2)劇場版最高の興収44億4000万円を記録した08年の第1作「相棒-劇場版-絶体絶命! 42.195km 東京ビッグシティマラソン」対比100%の数字の上、公開館数が約50館多い347館

などと分析した。

 水谷は、この日、東京・丸の内TOEIで行われた初日舞台あいさつで、「不思議」という独特の言いまわしで手応えを強調した。

 水谷 「相棒」は本当に不思議な世界だな、と最近は思っております。俳優として、このようなことが経験できるのか…「相棒」が始まって17年、シリーズになって15年…そして夢の劇場版が、4本目になりました。本当に、夢なのではないかと思ってしまうんです。どこまで、夢がかなうんだろう…。

 そして「さて、この先、どうなっていくのだろうというのが誰にも見当がつかない状態で、ずっとやってきていますから…さぁ、5度目の夢ですか? 冗談です」と、劇場版第5作の挑戦にまで意欲を見せた。

 その一方で現在、テレビ朝日系で放送中のシーズン15は、8日放送の14話までの平均視聴率が14・7%、最高視聴率は元日に放送した10話の17・3%と視聴率2ケタこそキープしているが、途中経過ながら10年以降の視聴率では最も低調だ。それは歴代の数字を見ても明らかだ。

 シーズン1(02年)全12話。平均視聴率13・3%、最高視聴率16・3%

 シーズン2(03~04年)全21話。平均視聴率13・1%、最高視聴率17・0%

 シーズン3(04~05年)全19話。平均視聴率13・2%、最高視聴率15・2%

 シーズン4(05~06年)全21話。平均視聴率14・8%、最高視聴率17・7%

 シーズン5(06~07年)全20話。平均視聴率16・0%、最高視聴率18・6%

 シーズン6(07~08年)全19話。平均視聴率16・1%、最高視聴率18・3%

 シーズン7(08~09年)全19話。平均視聴率18・1%、最高視聴率21・7%

 シーズン8(09~10年)全19話。平均視聴率17・9%、最高視聴率20・4%

 シーズン9(10~11年)全18話。平均視聴率20・3%、最高視聴率23・7%

 シーズン10(11~12年)全19話。平均視聴率16・6%、最高視聴率20・5%

 シーズン11(12~13年)全19話。平均視聴率17・3%、最高視聴率20・7%

 シーズン12(13~14年)全19話。平均視聴率17・4%、最高視聴率19・7%

 シーズン13(14~15年)全19話。平均視聴率17・4%、最高視聴率20・3%

 シーズン14(15~16年)全20話。平均視聴率15・3%、最高視聴率18・4%

 「相棒」はテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」枠の単発ドラマとして、00年6月に産声を上げた。01年11月まで3話放送された「プレシーズン」が、平均視聴率19・0%、最高視聴率22・0%と好調だったことから、02年10月に連続ドラマとなったが、反町が4代目相棒を演じるシーズン14、15の、視聴率の低下が目につく。

 その中、4代目相棒が登場する初の映画「相棒 劇場版IV」が好スタートを切った。公開前のプレミアイベントも、東京に2000人、大阪・道頓堀に2000人、北九州・小倉駅に4000人の、計1万人のファンが集結し、人気の健在をあらためて証明した。

 反町は、水谷演じる警視庁特命係・杉下右京の初代相棒・亀山薫役の寺脇康文、2代目・神戸尊役の及川光博、3代目・甲斐亨役を演じ、16年に芸能界を引退した成宮寛貴さんの代に劇場版が公開されたことを引き合いに「僕の時に映画がなかったら、どうしようと毎回話し、なかったら恨んでやります、5代目であったら、もっと恨みますと話していました」と冗談交じりに話した。水谷は、肌で感じた熱気から「相棒」人気の再燃を強調した。

 水谷 (『相棒』人気、ファンの愛を)実感しましたね。すべからく初代で作った財産を3代目が食いつぶして、4代目ではほとんど、どうにもならないというのが世の中で起こっているようですけど、4代目は、よくやっている。4代目は大事。本当に盛り上がっている。ここに来て「相棒」が再び、このような状態になるのは、ある意味、不思議ですし、とても、とてもうれしい。ありがたい。

 水谷は、反町の頑張りを強調した上で、「相棒」人気の要因として独自の作品性、世界観を挙げた。

 水谷 「相棒」は、始まった当初から“社会派エンターテインメント”と銘打ってやってきました。社会派でありエンターテインメント。映画は基本、エンターテインメントなんですが、その中で社会を描くという作品。さて、どこまでこれが続くと思ったら、ここまで来たという感じ。「相棒」はプレシーズン…2時間ドラマで始まったわけですけれども、こういうものが映画になればいい、というのが我々の夢だったんですね。(今回の映画で)4度目の夢がかなった。

 「相棒 劇場版4」は昨今、世界で問題となっている国際犯罪組織や無差別大量テロを描いており、水谷が口にする“社会派エンターテインメント”を追求した作品となった。水谷が「最もすばらしい出会いは、長い間『相棒』を楽しみ、応援し、支えてくれた皆さんとの出会い」と語る根強いファンの熱い支持が好スタートの要因と見られる。

 今後について、水谷は「おそらく、どうなるかは分からない状態で、また行くんだろうなと思っていますけれども」とシリーズの継続を示唆した。今後の展開を左右する要素として、劇場版の興行収入は、視聴率とともにテレビ朝日を中心とした制作側の、大きな判断材料になると見る。【村上幸将】