最近、試写室に入る前にプレスシートと呼ばれる作品資料の他に、ペラ1枚のただし書きを渡されることがある。

 そこには、登場人物の来歴の一部を明かさないようにとか、劇中の殺人に使用される凶器については触れないようにとか、映画を紹介する場合の注意が箇条書きにしてある。「ネタバレ」対策である。

 作品の内容や見どころを観客の興趣を削がないレベルで伝えるさじ加減は長らくこちら側に任されてきたように思う。暗黙のルールを破って一線を越えるような人もいなかった。

 正直、余計なお世話だと思う。事前にこのただし書きを読んだことがあだとなって犯人や凶器が分かってしまい、試写の段階でこちらの興趣がそがれたことも何度かあった。かえって作品の楽しさをまっとうに伝えることが難しくなったようにも思う。

 が、ネットの現状を見ればそこかしこにネタバレが横行して、映画会社側の気持ちが分からなくもない。時代も環境も違ってきているのだ。

 嘆いていても仕方がない。ただし書きは試写後に読もう、と心に決めている。が、好奇心に勝てず、ついつい目が行ってしまう場合もある。

 便利なネット社会も窮屈な部分は少なくない。試写会の「ただし書き」にその一端を感じている。