女優武田梨奈(25)が主演して15年、16年にBSジャパンで放送されたグルメドラマの新シリーズ「ワカコ酒3」(金曜午後11時半)の放送が7日からスタートした。武田がニッカンスポーツコムの取材に応じたインタビュー第2回は、武田が、森田昇プロデューサー(森田P)とともに「これまで話したことがない」(武田)という撮影の裏側を紹介する。

 -撮影の現状は

 武田 監督、スタッフが「この酒とつまみでいこう」などとギリギリまでロケハンしたり、試行錯誤しているんです。手間をかけて、いろいろやっています。

 森田P 酒は星の数ほど種類があるとは言え、大ざっぱに分けるとビールとウイスキー、ワイン、焼酎と日本酒くらい。過去1、2とやったので酒の飲み方、食べ物はマンネリにならないよう、メチャクチャ考えています。例えば店頭で升酒を飲む「角打ち」は、この番組がなかったら20代の女の子は接しないと思うし、角打ちをたっぷり、30分見せられることはないと思うのでやっています。

 武田 お酒が出てくると、これまでは監督から「これくらい、飲んでみようか?」というのがありましたが、今回は「自分のペースで、飲みたいところまで飲んでいいよ。じゃ本番!」みたいな瞬間がある。私が今まで2季演じてきたワカコを、信頼してくださっているんだなぁと感じます。だから、私の中では今季は挑戦ですね。飲んだ後のワカコの決めぜりふ「ぷしゅ~」のバリエーションも増えています。崩れたぷしゅ~とか、ロックな感じとかやっていましたね。

 森田P 実際、そういうことをやるのが、このドラマはすごく難しい。(普通のドラマは)相手と会話をして芝居するので出来るんですが、「ワカコ酒」は基本、ワカコが1人で黙々と飲んで、食べる。その中、モノローグで(気持ちを)延々と伝える…基本セオリーとしては、全くドラマの体をぶち壊しているし、放って置いたら毎回マンネリ、同じ画になってしまう。

 武田 いつも同じ画になってしまうのが怖いので、そこが毎回、プレッシャーですね。あの30分の番組を見ていると、普通に食べているところを撮って終わったって思われがちで。「撮りやすいね」みたいに言われますけど、1日中、すごく小まめにカット割りして、いろいろなところから撮る…撮り方も大変です。

 スタッフ ナレーションは非常に多い一方、画を撮っている方は、その回の物語における、日本酒の飲み方を、ずっと動きだけで見せる。しかも(座って飲んでいるので)動きが少ないから、すごく難しいです。

 武田 本編はモノローグで語るので、演じる時はしゃべっていませんが、テスト、リハーサルの時はモノローグを全部しゃべりながら食べて、飲むシーンを演じています。私が食べて、飲んで、注文する一連の流れで撮るので、カメラ、照明などの技術スタッフさんも、私の行動を把握した上で撮影に臨むので大変ですし、本番の緊張感はすごいです。共演の方も、私がモノローグを言い終わった段階で、しゃべらなければいけないので、すごく大変なんです。レギュラーの方は感覚をつかめたと言っていますが、ゲストの方は、いつも戸惑っています。シーズン3になって、信頼関係がないと、なかなか撮ることができるものじゃないとあらためて感じています。

 -撮影には実在のお店を使用し、本物の店長さんが出演することも少なくない

 武田 実際のお店の方は今回も出ています。味があって…すごくいいですね。

 森田P 人はまだいいけれど、もっと撮るのが難しいのは、食べものと飲み物。たとえば、ビールの泡は消えますからね。ついで、照明まで全部つけて、みんなスタンバイしても、泡がいまいちだから、もう1回とか。あと、芝居しているうちにグラスに水滴が付いたら、もう1回。役者の演技のスタンバイが出来てから、店のおやじさんに「炒めて!!」って頼んで、出来上がるところを、みんなで待って、湯気が上がっているうちに「はい、芝居スタート!!」って(笑い)

 武田 お店の方まで巻きこんで撮っているんです。監督たちが1番言うのは、ビールは炭酸もあり、泡も音もあるからおいしさが伝わりやすいけれど、日本酒は透明なので、おいしさを伝えるのが難しいということ。飲む時もシンプルなので、すごく表現が難しい…毎回、監督やスタッフと相談しながら撮っています。

 森田P カクテルなら画になるんですけど、日本酒は透明なので、演じる方も撮る方も、マンネリにならないようにしなければいけないですし、きれいに撮らなければ…と。

 武田 本当に撮影はすごい楽しいですし、おいしいお酒とさかなをいただける、すてきな現場だと思いますが、難しい撮り方をしているのでスタッフさんは苦労されているんです。お酒も、失敗したら最初から飲まないといけません。食べものは実際にお店で作っているものなので、本当においしくて。撮影が終わった後、残ったものはもったいないので、いただきます。

 -食べるテクニックも上がっている。見せる部分がスキルアップしている。

 ありがたいですね。特にお酒を飲むシーンが良くなったのは、単純にお酒が好きになったからだと思います。表現の仕方が変わったのかなと思いますね。

 次回は、武田が女優業への思い、今後について今の思いを語る。【村上幸将】

 ◆「ワカコ酒」 11年から「月刊コミックゼノン」(徳間書店)で連載中の新久千映氏の漫画を原作に15年、BSジャパン初の連ドラとして実写化。うまい酒とさかなを口にすると感動で「ぷしゅー」と吐息を漏らすワカコが人気を集め、同6月に東京・新宿ピカデリーで行われた「-シーズン1」日本酒試飲上映会には、女性100人が集結。同7月にはアニメ化。韓国でも「私に乾杯~ヨジュの酒」のタイトルでドラマ化され同12月から放送。日本では16年に「-シーズン2」が放送された。