熊本地震発生から1年後の14日、行定勲監督(48)がメガホンを取り、震災発生後に全国、世界各国でチャリティー上映された中編映画「うつくしいひと」と、その続編として製作された「うつくしいひと サバ?」が東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映された。

 「うつくしいひと」は、行定監督が熊本の美しさを伝える意図で故郷を舞台に初めて撮影した映画で、県や県内企業らの協力を受けて15年10月に撮影。高良健吾(29)演じる探偵が、謎の黒服男から母、娘を守る物語。翌16年4月14日に熊本地震が発生したことを受け、同監督が全国でチャリティー上映会を開催した。地震前の熊本の美しい風景が映された映画は、被災した熊本県民の支えにもなった。「-サバ?」は、熊本地震で甚大な被害を受けた益城町で16年10月に撮影。高良演じる探偵が人捜しに加担する中で、被災地の人の心情、自分の感情に触れる物語だ。

 高良は「『うつくしいひと』は、熊本のいいところを知ってもらいたくて作りました。震災が起こって、当初の形が変わっていろいろな人の伝わった。行定さんは震災があった時、既に『震災後の熊本を取らなければいけない』と言っていた。僕は震災前も後も今、その瞬間に生きる熊本の人たちを、探偵を通して演じたつもりです」と語った。

 その上で「自分は熊本が好きで、熊本で育って、だからこそ見えない、しゃべられない部分がある。東京や県外の人が話すことで気付かされることがある。『うつくしいひと サバ?』で、熊本の今だったり、良さだったり興味を持ってもらうのが、これからの未来の熊本につながっていく…そういう気持ちでこの1年を過ごした」と語った。

 行定監督は、16年4月15日深夜に発生した本震の際、熊本市内にいた。それから1年を振り返り「長かった。3年くらいたった気がします。本震の時に熊本にいなかったら『-サバ?』は出来なかったと思う。熊本を大切に思うようになった」と語った。そして「それでも日常を生きていこうとしている、たくさんの人がいるんだということも、僕らは知っていかなければいけない。自分が被災者とは言いたくないけれど、そういう立場でいても知らないことがあり、この映画を作ることで教わった。何かの手助けが出来るようにやっていきたいと思った1年」と語った。

 「-サバ?」は、行定監督の所属事務所が製作し、今夏から全国の劇場で一般公開する方向で調整が進められている。監督の事務所が得た収益、また計画中のパッケージ販売や配信における利益は、全て熊本県、被災者に寄付するという。

 この日の上映会には、米村亮太朗、中別府葵、石橋静河、ロイック・ガルニエも登壇した。【村上幸将】