脳科学者の茂木健一郎氏(58)が、大学入学共通テストで“鼻出しマスク”の受験生が失格となった問題で、あらためて「試験官側は、複数回注意して効果がなかった時点で、受験番号を控えて後に事情を聞くなどの対応をとるべきだった」と自身の考えを示した。

茂木氏は18日の時点で「試験結果無効のような重大な結果をもたらす判断をする上ではお粗末。杓子定規のロボット試験監督による人権侵害だと私には思える」とツイートし、「非典型的な個性に向き合い、包摂することが本質。注意されたらおとなしく従うということが悪意ではなくできない個性もあります。しかもマスクという人によって身体性知覚が異なるものが対象なのに。明らかに試験官側の対処が稚拙。記録して後に事情も聞けた。これはマスクゲートだ」と、試験官側の対応を批判していた。

その後、受験生が40代だと報じられたが、「人の認知行動様式の多様性についての理解、対応が欠けていたという本質的な問題は何も変わりません」とし、19日にも「繰り返し畳み掛けるように注意されると、追い詰められたような気持ちになって非典型的な行動に出る方は年齢に関係なくいらっしゃると思います。試験官側は、複数回注意して効果がなかった時点で、受験番号を控えて後に事情を聞くなどの対応をとるべきだったと考えます」と、自身の考えを示した。

その後さらに、当該受験生が失格後に会場のトイレに約3時間閉じこもっていたとして警視庁に建造物不退去容疑で現行犯逮捕されたとの報道を受け、自身のYouTubeチャンネルを更新。報じられている当該受験生の行動については「そういうことをすることが共通試験の会場で好ましいことであるはずがない」と批判した上で、「もし大学入試センター側が運用上、多くの受験生に一番集中できる形で受験していただくことを最優先する運用だったならば、そういう非典型的な受験生がいたときに、今回のような対応では足りないということは理解しておくべきだった」とした。

続けて「非典型的な方がいらしたときに、通常の意味で『規定がこうなってますから守ってください』と言っても通じない場合があるということは当然、大学入試センター側は想定しておくべきだと思う」と持論を展開。「そもそも試験会場に黙って座っているのが苦痛なお子さんはいる。それは何歳であれ。ましてやマスクという身体に関わるプレッシャーの中で非典型的な反応をするお子さんはこれからもいらっしゃるでしょう」とし、「そういうときに、単にルールを適用して、『何回注意したから、どう』ということでは対応できないケースは出てくる。そのことについての理解を我々は共有する必要がある」とした。

また、一連の発言が「個性が大事だからルールを破っていい」と一部ネット上で受け取られたことについては「一言も言ってない。個人の自由が公共の福祉に優先するなんて誰も言っていない」とキッパリ否定。報じられている当該受験生のとった行動については「迷惑行為だと思う」とした上で、自身は一貫して「そういう極端な反応を引き起こす非典型的なパーソナリティーの方とどう向き合うか」について考えを述べていると説明した。