NHKの人気番組「プロジェクトX」功労者の今井彰エグゼクティブプロデューサー(EP=52)が11月30日、東京・渋谷区内の衣料品店で総額7300円の衣料品を万引し、窃盗容疑で警視庁渋谷署に事情聴取されたことが1日、分かった。同署は容疑が固まり次第、送検する方針。今井EPは同署の調べに「やりました」などと万引の容疑を認めたが、取材には「盗む意図はまったくなかった」と説明した。将来が明るいエリートテレビマンの犯罪に、同局はショックの色を隠せなかった。

 今井EPは休日だった30日午後6時ごろ、1人で渋谷区内の衣料品店に出かけ、マフラーとストール、Tシャツ2枚の計4点(7300円相当)を万引した。

 渋谷署によると、店の警備員が今井EPの不審な行動に気付き、商品を店外に持ち出そうとする際に呼び止めた。問いただすと万引を認めたため、午後6時31分、同署に通報。今井EPは同署の事情聴取にも万引を認め、反省している様子だったという。証拠もあり、逃走の恐れもないため逮捕はしなかった。

 NHKは1日午後、会見を開いた。自宅待機の今井EPから事情を聴き「動機がはっきりしない。『過去には(万引は)絶対にない』と言っている」と説明。今井EPの「NHKが信頼回復期に向かっている中、こうした事態を招き、大変申し訳ありません。『プロジェクトX』という番組に傷をつけてしまい、悔しい思いと堪え難い気持ち」との反省コメントを紹介した。NHKは事実関係を見極め「厳しく処分したい」としている。

 しかし、今井EPはこの日夜、取材に対し「店内が込んでいて気分が悪くなり、休憩しようと店の前の歩道に出たら『万引だ』と嫌疑をかけられ、店員や警備員に認めるよう暴行や脅迫を受けた。騒ぎを終わらせたい一心で、警察には未精算商品を持ったまま店外に出た外形的事実を認めたが、盗む意図はまったくなかった」と話した。警察の事情聴取とは違うため、今後の司法判断を待つ必要がありそうだ。

 今井EPは80年にNHKに入局。00年3月から05年12月まで放送された「プロジェクトX」187本すべてを手がけた。NHK側も「意欲的で、優秀なプロデューサーに間違いない」と評価する。00年に「プロジェクトX」で、菊池寛賞と橋田賞、ATP賞などを受賞。別の番組でも文化庁芸術作品賞やギャラクシー賞を受賞するなど、輝かしい実績をもつ。

 現在は、制作局で部下15人を抱え、番組開発を統括する責任者。「カンゴロンゴ」や「東京カワイイ★TV」などを手がけ、局次長にあたる管理職だ。エリートコースを歩み、将来の理事(一般企業での役員)候補との声もあった人物の犯罪だけに、局内も揺れている。