全盲の落語家、笑福亭伯鶴(はっかく=51、本名・丹羽透)が1日夜、大阪市淀川区三国本町の阪急宝塚線三国駅ホームで普通電車と接触して引きずられ、脳挫傷と両脚骨折で重体となった。伯鶴は落語会の打ち合わせで飲食した帰りで、淀川署は誤って電車と接触した可能性があるとみている。

 目の不自由な落語家が、不運な事故に遭った。伯鶴は1日夜、大阪・梅田で落語会の打ち合わせを行い、その帰り道のアクシデントだった。午後11時ごろ、いつものように三国駅で電車を降りた後、脚をホームと電車にはさまれ、約15メートルにわたって引きずられたという。病院に運ばれたが、脳挫傷と両足骨折で重体。

 事故の直前まで一緒にいた知人によると、打ち合わせではビールや焼酎を飲んだが、酩酊(めいてい)するほどではなかった。足取りもふだんと変わらなかったという。ただ、目の見えない伯鶴は通常、決まった車両の座席に座るが、このときはいつもと違う車両だった。心配する知人に「大丈夫ですよ」と声をかけ、自宅のある三国駅で下車。ホームから出口に向かう途中で柱にぶつかり、違う方向に歩きだすのを知人は電車内から見たという。

 調べなどによると、電車が動きだした際、先頭車両付近のホーム上をふらふらと歩いていた伯鶴が車両側面にぶつかって引きずられた。ホーム端のフェンスを乗り越えたところで倒れていた。車両側面には血痕が付着し、ホーム下には視覚障害者用のつえが落ちていた。

 社団法人大阪市視覚障害者福祉協会の政所章理事(63)は「こういう事故を防ぐのは難しい。ホームに駅員を置くしかない」と指摘した。

 同駅のホームには視覚障害者用のタイルが敷かれていたが、事故当時、駅員はいなかった。運転士(31)や車掌(28)は事故に気づかず、そのまま通常運転を続けた。三国駅のホームはカーブしており、電車最後部の車掌から事故現場が見えにくくなっている。

 伯鶴は8日夜に大阪市北区の天満天神繁昌亭で「お笑い人権寄席」に、また15~21日は同所で昼席に出演予定だった。知人は「早く元気になってほしい」と心配そう。事務所では「飲んだお酒は通常の量と思う。使い慣れた駅なので心配していなかったのですが…」と話した。