覚せい剤取締法違反の罪に問われた女優酒井法子被告(38)の判決公判が9日、東京地裁で行われ、懲役1年6月、執行猶予3年の判決が下された。常習性や、逮捕前の逃亡が「卑劣」と断じられたが、所属事務所を解雇されるなど社会的制裁を受け、前科もないことで、3年の執行猶予が付いた。一方で芸能界の関係者の間では「執行猶予期間中の芸能界復帰は認められない」という意見が多く、追放の声まである。酒井被告は、群馬に本部がある創造学園大学で介護を学ぶ予定であることも分かった。

 初公判と同様に、酒井被告は黒ずくめで入廷した。シャツ、ジャケット、パンツ、靴、髪を束ねたゴムまで黒。緊張した様子だったが、村山浩昭裁判長に「高相法子被告ですね」と問われると、はっきりした声で「はい」とうなずいた。

 主文で懲役1年6月、執行猶予3年、覚せい剤の没収などが言い渡されたが、酒井被告はわずかに体を動かしただけ。もう1度繰り返し言い渡されると、うなずいて礼をした。初犯で、前科ない場合の量刑としてはごく妥当だったが、その後に続いた量刑理由には厳しい言葉が並んだ。

 家族旅行先で覚せい剤を吸引していたことは「覚せい剤への執着」とされ、酒井被告や弁護士が、初公判で依存性はないことを主張したが「常習性、ある程度の依存性はある」とされた。さらに、逮捕前の逃亡については「卑劣」と断じられた。

 動かなかった酒井被告が、深く礼をしたのは「反省を深め、覚せい剤との絶縁を誓い、覚せい剤を勧めた夫との離婚も考えている」と、反省の姿勢を認められた時だった。初公判で夫高相祐一被告(41)と離婚する意向を示し、涙を流した。3年の執行猶予は、夫との離婚が「条件」のようになったが、酒井被告はじっと聞き入った。

 裁判官に「これまで映画やドラマでいろんな役を演じてきたでしょうが、残念ながらこの事件も裁判も現実です。重みに負けず、薬物から手を切って更生されることを望みます」と諭されると、しっかり「はい」とうなずいた。裁判官は罪の重みを確かめさせたかったのか、酒井被告に量刑を復唱させた。異例のことだったが、酒井被告は自分で量刑を「懲役1年6月、執行猶予3年です」と小声で口にし、裁判官と検察官に深い礼をして退廷した。

 執行猶予が付いたことで、通常通り生活できる。芸能界復帰も法律上の問題はない。しかし、芸能界の関係者の間では「3年間は芸能活動はできない」との意見が大勢だ。ある芸能事務所幹部は「今回の薬物事件は世間の大きな関心を呼んだ。少なくとも執行猶予期間中は芸能活動を自粛すべきだ。でないと、芸能界が『甘い体質』と世間に思われる」と話した。さらに「薬物犯罪に対する世間の目は厳しい。夢を売る芸能界としてきっちりけじめをつけるべき」と、追放勧告の声もあった。下った量刑は、数字が示す以上に重いものなのかもしれない。

 [2009年11月10日9時40分

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