タレント島田紳助さん(55)の電撃引退の背景には、警察庁が最近総力を挙げ進めている暴力団壊滅策があるとみられる。同庁は09年以降、芸能界と裏社会との関わり根絶に向けて本腰を入れており、吉本興業も以前から島田さんに対し、暴力団関係者との関係を断つよう通達していたという。だが、島田さんは「関係」を断ち切れず、「引退受理」は同社としても苦渋の判断だったようだ。一方、島田さんの引退を受け、テレビ各局や、CMスポンサーは対応に追われた。

 警察庁の安藤隆春長官(61)は09年の長官就任以来、暴力団の取り締まり強化を強調してきた。10年には日本最大の指定暴力団である山口組の弱体化策を明確に打ち出し、幹部らの徹底した摘発を行い、暴力団壊滅に向け、強い姿勢で臨み続けている。

 警察当局の芸能界への目も厳しくなった。元女優酒井法子さん、俳優押尾学被告が薬物で相次いで逮捕された09年夏の定例会見で安藤長官は「芸能関係者は薬物を一掃するよう再発防止に真剣に取り組んでほしい」と異例の要請。薬物を含め、裏社会との関係を断つことを、強く求めたものとみられた。この時、吉本興業も「何らかの対策を前向きに検討している」と積極的に受け止めていた。

 島田さんが、渡辺二郎被告を通じて「親密メール」を送るなどしていた相手は、まさにその山口組の最高幹部の1人だったという。

 関係者によると、「黒い交際」の情報があった島田さんに対し吉本は以前から、こういった暴力団関係者との関係を断つよう複数回通達していたという。

 しかし、結果的に関係が「断絶」されることまではなかったとみられ、島田さんはメールの存在などを認めてその場で引退を表明。吉本もそれを受理するという苦渋の判断をする結果となった。

 23日夜の引退会見に同席した吉本興業子会社のよしもとクリエイティブ・エージェンシー水谷暢宏社長は「弊社では、各タレントに対するコンプライアンス研修を毎年実施しており、その一環として暴力団を含む反社会的勢力との関係遮断についても啓発に努めてきた」と説明。島田さんの「黒い関係」についても「社会的影響力の高いテレビなどのメディアに出演しているタレントとしては、その理由を問わず、許されない」と話していた。