今年前期のNHK連続テレビ小説「おひさま」でヒロインを務めた女優井上真央(24)が、大みそかの「第62回NHK紅白歌合戦」(午後7時15分スタート)で、紅組の司会を務めることが19日、都内の同局で発表された。紅白司会初挑戦の井上は不安を口にしながらも、「見てる人が未来に希望が持てるような1年の締めくくりができたら」と抱負を語った。

 白いワンピース姿で会見場に姿を見せた井上は、神妙な表情であいさつを始めた。「司会も歌手活動もしていないのに何で私なんだろうとみなさんも思い、心配と不安も抱いているかもしれませんが、私自身が一番、不安です」。

 こう前置きした後は、決意表明になった。

 「『おひさま』で全国のたくさんの方に応援してもらい、司会の話もドラマのおかげです。応援してくれた方に喜んでもらえたらうれしいと、司会をやらせてもらうことになりました。荷が重すぎると思いましたが、今年はNHK漬けの1年。恩返しの意味で精いっぱい頑張ります」。

 ドラマや映画では、喜怒哀楽をたくみに演じ分けるその顔は、明らかに緊張でこわばっていた。

 「発表で緊張していて、本番ではどうなるんだろう。でも一緒に司会を務める嵐のみなさんがいて心強いです。1つ1つ勉強してついていきます」。嵐のメンバーが返してくれた笑顔を見て、ようやくほおが緩んだ。

 迷った末の決断だった。実際、井上は紅白司会のオファーを「畑違いの分野」と考え、固辞していた。週刊誌の紅白司会者予想で、自分とともに紅組候補に挙がった有働由美子アナとは「私はないので、有働さん頑張ってくださいね」と、冗談話を振っていた。

 ただ、今年のNHKは粘り腰だった。「今年の司会者は、東日本大震災直後から、ささやかな幸せを毎朝届けてくれた、日本を照らし続けてくれた『おひさま』しかいない」と諦めなかった。井上が1年間ともに働いたドラマ関係者も加えて交渉を続け、ついに首を縦に振らせた。

 井上が受諾した最大の理由は、NHKへの恩返しだ。もう1つ、「おひさま」が福島県などの東日本大震災の被災地で平均視聴率が30%(ビデオリサーチ調べ)を超えたことも大きかった。周囲には「こんな女優冥利(みょうり)に尽きることはない。今後も少しでもお力になりたいし、恩返ししたい」と話していた。

 井上は被災地で必死に生きる人たちのためにも、大みそかの夜を“おひさま”のように明るく照らす。

 ◆井上真央(いのうえ・まお)1987年(昭62)1月9日、横浜市生まれ。5歳で子役デビューし、99年TBS系「キッズ・ウォー」シリーズの今井茜役で注目される。03年TBS系「キッズ・ウォー5・ざけんなよ・」に主演。04年に大学進学のため芸能活動を一時休止。復帰後は05年TBS系ドラマ「花より男子」に初主演。血液型O。