サックス奏者の矢野沙織(25)が、世界的トランペッター日野皓正(69)と初コラボを実現させた。新アルバム「Answer」(10月17日発売)でゲストミュージシャンに日野を迎えた。矢野は「日野さんは音楽を着こなしているような方。本当に格好いい。私もそんな大人になりたい」とあこがれの存在との共演に今も夢見心地の様子だ。

 矢野は異色の経歴の持ち主だ。中学校時代は落ちこぼれで不登校になった。「先生、学校、親が嫌いでした。今思えば時間を無駄にしてましたが…」。父親が持っていたアルバムを聞いてジャズに魅了された。さらに米女性ジャズ歌手ビリー・ホリデイの自伝で、14歳で生計を立てていた事実を知り、衝撃を受けた。高校進学は考えず、小学校時代に親しんだサックスを手に、100軒以上のジャズクラブに足を運んで出演交渉した。レコード会社のプロデューサーに認められ、デビューを実現させた。16歳だった。

 演奏の実力を磨く一方、アルバムジャケットではバニーガールやクレオパトラに扮(ふん)するなど女性らしさを前面に押し出し、ビジュアル系ジャズ奏者とも言われる。ジャズ界は女性奏者はまだマイナーな存在。「私がした苦労をしなくていいように、女性や子供にも間口を広げたかった」とビジュアルにこだわる理由を明かした。07年の日本ゴールドディスク大賞受賞後、「好き勝手言えるようになった」。

 将来の進路に悩む10代に向けてはこう言う。「目標を持てなんて、大人の詭弁(きべん)。やんなきゃいけない時がきっとくる。それまで無理せず、よく食べ、普通に元気に暮らしていれば、それで十分」。焦らず、勝負時を見極めることが大切という。【山田準】

 ◆矢野沙織(やの・さおり)1986年(昭61)10月27日、東京生まれ。小学校のブラスバンドで、じゃんけんに負けてアルトサックスを担当した。16歳だった03年9月にジャズの名門SAVOYレーベルからデビュー。04年「OPEN

 MIND」がテレビ朝日系「報道ステーション」のテーマ曲に。05年にニューヨークで単独公演。07年ベストアルバム「ジャズ回帰」で日本ゴールドディスク大賞のジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー受賞。