女優尾野真千子(30)が悪女を熱演した。29日、東京・台場のフジテレビで、常盤貴子(40)とダブル主演を務めた同局系ドラマ「疑惑」(11月9日、午後9時)の完成披露試写会に出席した。ドラマは松本清張没後20周年特別企画の第3弾。明朗快活なヒロインを演じたNHK連続テレビ小説「カーネーション」の印象が今も強いが、今回は保険金目的の夫殺しで起訴される強欲妻を演じた。「新たな自分が見られるのでは」と新境地開拓を予感していた。

 尾野は試写会後、壇上に姿を見せると「とても性格の悪い女の人だけど、思い切りやりました」とすがすがしい笑顔で話した。劇中では、夫に馬乗りになって首を絞めたり、花瓶で男性の頭を殴ったりと数々の暴力をふるう。鋭い目つきで相手をにらみつけながら「死ね!」「てめえ、覚えとけよ!」など乱暴で荒々しい言葉を繰り返す。メーキャップも濃く、派手なワンピースを着て、堂々と振る舞う姿が印象的だ。

 原作は、松本清張氏の82年発表の同名小説。発表年に映画化されて以降、3度もドラマ化された傑作ミステリーだ。保険金目的の夫殺しで起訴された「鬼クマ」こと白河球磨子を尾野が演じ、球磨子の弁護を担当する弁護士・佐原千鶴を常盤貴子が演じている。これまでのドラマや映画で球磨子を演じていたのは桃井かおり、いしだあゆみら演技派女優たち。尾野にとってはこれまでにない悪女役だ。

 この日は「オファーが来たとき、どうしようか迷いました」と明かした。受け取った台本に「乱暴な言葉がずらっと並んでいた」ことに戸惑いもあったという。それでも熟考の末に「新たな自分が見られるんじゃないかと思いまして、誘いに乗りました」と決意したという。会見で「球磨子に似ている悪女な部分はあるか?」と聞かれると「もし似ているところがあっても言いたくないです」と苦笑いした。

 「カーネーション」では明るく、たくましく生きる女性を好演。視聴率にも恵まれ、尾野の知名度、人気は一気に広がった。その後も正義感が強く、りりしい女性を演じる機会が多かったが、日本映画史、ドラマ史に残る「悪女」に挑戦することで、演技の幅を広げた。「以前にもドラマ化、映画化されていて緊張する部分もありましたが、清張作品に出演できたことはとてもうれしかった」。手応えを得た様子だった。