個人事務所が名古屋国税局から約7500万円の申告漏れを指摘され、芸能活動を休止していた元プロ野球選手でタレントの板東英二(73)が10日、大阪市内で会見し「私自身が税について無知だったことが原因」と涙を浮かべ謝罪した。申告漏れの一部について「約20年間している植毛が経費で落ちると思っていた」と説明した。架空外注などについては否定した。板東は復帰への意欲も見せたが、オファーはない。

 板東は小さく会釈をしながら登場。昨年12月に申告漏れが発覚して以降、初の公の場。約45分間の会見中は終始目を潤ませた。「私個人のお金と事務所のお金を1人の経理が管理していた。公私混同というかどんぶり勘定のような状況。認識の甘さと、税に対する考えの浅はかさを痛感しています」と沈痛な面もちで、具体的な説明をした。

 個人事務所「オフィスメイ・ワーク」(名古屋市)の申告漏れのうち約5000万円は取引先への架空外注費などによる所得隠しとされ、その手口が問題視された。だが同席した河原誠弁護士は「架空外注費、架空貸し付けを税務署が認定したことはございません」と否定。「見解の相違」はあったが、すでに修正申告、納税をすませたとした。

 板東は「見解の相違」について「約20年近く、植毛をずっとやってまいりました。経費で落ちると思っていた」と“秘密”を明かし、植毛費用を経費としていたと説明。「カツラが経費として落ちると聞いていたので、当然植毛もと思っていた。今回の調査で植毛は美容整形と同じだと、初めて(経費にならないと)分かった次第です。それが大きな見解の相違の中の1つ」と釈明したが、金額は明かさなかった。一般的には、本数にもよるが約100万円が相場で、1000本単位になると400万円以上にもなるという。

 謝罪会見が遅れた理由として「今も野球選手の血がある。(現役)選手が努力している中、私ごときのプライベートで(紙面を)邪魔できない」とプロ野球シーズン中の会見を見合わせていたと説明した。

 この日までに個人事務所を閉鎖した。問題発覚後、TBS系「世界ふしぎ発見!」などテレビ、ラジオを合わせ週9本のレギュラーは降板や打ち切りが相次いだ。出演オファーについて「残念ながらどの局からもお言葉をいただいておりません」。“復帰会見”は金銭的な困窮もあるようだ。今後について「許されるならもう1度チャンスをいただきたい」と意欲を見せたが、険しい道が続きそうだ。【鈴木絢子】

 ◆板東英二(ばんどう・えいじ)本名同じ。1940年(昭15)4月5日、満州(現中国東北地方)生まれ。58年夏の甲子園に徳島商のエースで出場。準々決勝では魚津高校の村椿投手と延長18回引き分け試合を投げ合って、日本中をわかせた。59年に中日入団。69年の引退まで77勝65敗、防御率2・89。引退後は司会、タレントなどで活躍。また、俳優としてもTBS系ドラマ「毎度おさわがせします」や映画「あ・うん」などに出演した。家族は妻と2女。血液型O。<板東の申告漏れ経過>

 ▼2012年12月27日

 個人事務所「オフィスメイ・ワーク」が名古屋国税局の税務調査を受け、11年8月期までの7年間で約7500万円の申告漏れを指摘されたことが発覚。うち約5000万円が取引先への架空外注費などによる所得隠しと認定。重加算税を含めた追徴税額は約2800万円。この時点で既に修正申告。板東は88年に国税庁のPRポスターに起用されて以来、期限内の確定申告を呼びかける同庁のPR活動をしていた。

 ▼13年2月1日

 中部日本放送(名古屋市)の2番組打ち切り

 ▼同2月27日

 86年の放送開始から出演したTBS系「世界ふしぎ発見!」(土曜午後9時)を降板

 ▼同3月7日

 京セラドーム大阪でのプロ野球オープン戦試合前に当時中日監督の高木守道氏を訪問。騒動後初めて姿を見せた。