児童養護施設を舞台にしたドラマ「明日、ママがいない」(水曜午後10時)を放送している日本テレビに対し、全国児童養護施設協議会が21日、内容の改善を求めた怒りの会見を都内で行った。同協議会は、全国里親会とともに、同ドラマで子供をペット扱いし、実態と懸け離れた職員の暴言シーンなどを容認できないとあらためて批判した。

 全国約600の児童養護施設で作る同協議会の藤野興一会長(72)は「いかにフィクションとはいえ、子供にはこたえる。自殺者が出たらどうするんだ」と強く抗議した。主演の芦田愛菜(9)と同世代の子供たちが学校で「お前が主人公か」「お前もどこかにもらわれていくのか」などと言われていると説明した。

 全国里親会の星野崇会長は「芦田愛菜ちゃんがかわいそう。こういう思想を植え付けられてしまって。基本的には放送を中止してほしい」と語り、「成り行きによってはスポンサーにお話をした方がいいのかなと思っている」と強い姿勢を示した。

 さらに藤野会長は、昨年12月に番組の予告を見て、同協議会として番組側に問い合わせを入れたところ、番組側から第1話の台本を見せられた経緯を明かした。その上で「改善要求をして、検討するという返答だったが、ほとんど何も変わっていなかった」と同局を批判。放送直前には、番組HPで施設の実態を説明する原稿を依頼されたという。その際には「『家なき子』以来の素晴らしいドラマにする」と言われたといい、藤野会長は「虫が良すぎる」と怒りをにじませた。

 「家なき子」は安達祐実が主演し、94年に日本テレビ系で放送された作品。主人公の小学生が強く生きる姿を描いた一方で、いじめシーンの過激さで問題視された。同作で脚本を手掛けた野島伸司氏は、「明日、ママがいない」でも脚本監修を担当。同局は当初から同様のインパクトのある内容で、話題となることを想定していた可能性もある。