声優永井一郎さん(享年82)の葬儀・告別式が3日、東京・青山葬儀所で営まれた。磯野波平の声を演じたアニメ「サザエさん」のサザエ役の加藤みどりとカツオ役の冨永みーなが「子どもたちからのお別れのメッセージ」を語りかけた。

 加藤

 父さん。45年間「行ってらっしゃい」の声で1日が始まったのよね。

 冨永

 でももうお帰りはないんだよね。父さん大好きです。もっといっぱい一緒にお風呂に入りたかった。もっと叱られたかった。

 加藤

 私もお酒に合うお料理を作って、父さんに「これはうまい」って褒めてもらいたかった。でもね、父さん、きっとその辺で、いつもいつも私たちを見守っててくれてるよね。

 冨永

 そう思う。

 2人で

 磯野波平の永井一郎さん、さようなら。

 加藤は69年の放送開始から45年、冨永は98年に故高橋和枝さんの体調不良による降板を受けて約15年、ともに親子を演じてきた。永井さんの急逝から3日後の1月30日に行われた2月16日放送分の収録時、永井さんの席には花が飾られ、代わって他のスタッフがセリフを読むなど、スタジオは前週までと比べ変わり果てた。加藤は「厳しい悲しさ」、冨永は「受け入れなくちゃいけないんだと、とても悲しくなった」。それでも加藤は「レギュラー21人の大所帯。こういう時に頑張ろうね、助け合おうねと言うんです」。冨永は「永井さんが1回1回頑張るんだよ、とおっしゃった気持ちは変わらない」と“磯野家愛”は不変と強調した。

 永井さんに子供はいなかったが、サザエたちに負けないファミリーがいた。実弟の二郎さん(75)は、永井さんが自宅の稽古場に役者を志す若者を招き、酒を酌み交わす集いを定期的に開き、「これが俺の子供たち、家族なんだ」とうれしそうに語っていたことを明かした。波平の名ゼリフ「ばっかも~ん!!」の声で出棺を見送った後、「永井先生、ありがとう」という教え子の泣き声が相次いだ。サザエさん一家ともう1つの“家族”に見送られ、永井さんは旅立った。【村上幸将】