1月3日に亡くなった歌手でタレントのやしきたかじんさん(享年64)をしのぶ会が3日、大阪市内のホテルで行われ、たかじんさんの“最後の歌声”が披露された。昨年10月に療養先のハワイで、さくら夫人に感謝を伝えた曲を録音したもので、他にも多くの歌唱映像や楽曲が流され、実質的な音楽葬となった。親交のあった作詞家・秋元康氏(55)大阪維新の会・橋下徹代表(44)ら著名人のほか、一般ファンも含めて計4200人以上が参列した。

 最後のお別れは「歌手やしきたかじん」だった。著名人らによる夕方からのしのぶ会は2時間を超えた。その終盤。アカペラの甘い歌声が、幻の楽曲が場内に流れた。耳慣れぬフレーズと曲に、参列者も聞き入った。

 80年代のオリジナル曲「順子」の替え歌。昨年10月、療養先のハワイで「順子」を夫人の名前「さくら」に置き換えて歌い録音した。たかじんさんを駆け出し時代から知る竹中建三氏によると、昨秋に再婚した32歳下のさくら夫人へ「ありがとう」と感謝の思いをつめこんだ歌声だった。曲調も原曲とは微妙に変わっている。新たに完成したかもしれない幻のナンバーは、たかじんさんの“最後の歌声”となり、この日、公開された。

 しのぶ会では「歌手」としてのたかじんさんがクローズアップされた。さながら音楽葬であり、ライブ葬。アマチュア時代の映像から、08年のコンサート「Koi-con」まで歌声が響き続けた。「東京」「未練」「やっぱ好きやねん」「なめとんか」「ICHIZU」…。ヒット曲が次々と流された。

 「AKB48グループ」の総合プロデューサーでもあり、今を時めく秋元氏が無名時代にたかじんさんから助言を受けた思い出を語った。「34年前、詞を見てもらってボロクソに言われたが、たかじんさんの歌への情熱がなければ作詞家になっていなかったかもしれない」。たかじんさんの依頼を受け作曲・小室哲哉氏で新曲を作っていたが、未完で残った。「(たかじんさんから)俺の最後の歌を書けと言われたが、こんなに早く亡くなるとは…」と唇をかんだ。

 場内では、たかじんさんがさくら夫人へ宛てた手紙も紹介された。「何万語、何億語、言葉を探しても出てくる言葉は『さくら、ありがとう』」とつづられていた。これを受ける形で、夫人もあいさつを行った。

 「シャイな主人なので、天国で照れくさそうにしているのではないでしょうか。主人は生前『人は死んだ後も、残った人の心の中にどれだけ生き続けられるかや。それが人間の生きた証しや。そやから忘れんといてね』とよく言っていました」-。それは、真っすぐに全力で駆け抜けたたかじんさんのメッセージだった。

 また、昼すぎからは一般参列の献花が行われた。ファン3700人が詰め掛け、予定を1時間半延長。実行委員会はJR大阪駅から会場へ向かうホテルのシャトルバスを倍増させて対応した。一般ファン向けのメッセージカードにはたかじんさん直筆で「運命

 寿命

 感謝」と書かれていた。【村上久美子】