喉頭がんで闘病中の音楽プロデューサーつんく♂(45)が15日、今年3月6日のがん公表後、初めて公の場に姿を見せた。東京・北の丸公園の日本武道館で行われたアイドルグループ、スマイレージの単独公演を視察。リハーサルから駆けつけ、特別に気に掛けてきたメンバーにかすれ声で指示も出していた。

 つんく♂は、マスクを付け、黒いジャケット姿で、アリーナ後方の関係者席に座っていた。休業前より後ろ髪が伸びていた。顔色はよく、痩せた様子もなかった。時折、隣に座った夫人や娘と談笑しつつ、観客約8000人から大歓声を浴びるスマイレージの6人を、じっと見守っていた。家族が同席していたことなどもあり、本人と所属事務所の意向で、写真撮影はNGとされた。

 がん公表後、初めてライブ会場に姿を見せた理由は、スマイレージが今、特別に気になる存在になっているからだった。メジャーデビューした10年、レコード大賞最優秀新人賞を獲得も、ハロープロジェクトの先輩、モーニング娘。、℃-ute、Berryz工房に知名度や人気で追いつけない状態が続いている。最新シングルの売り上げでは、後輩のJuice=Juiceにも抜かれた。今年1月のライブ前には、つんく♂が取材陣を前に「スマイレージは気合入れないとあかんで」と発言。一方で初の武道館公演が決まり、チケット完売が現実味を帯びてくると、ツイッターで「うれしい誤算。ありがとうございます」とファンに感謝した。

 この日は、開演前のリハーサルから会場に訪れていた。時には、ステージに近づき、かすれた声ながらも、身ぶり手ぶりをあわせてメンバーやスタッフに指示を送っていたという。また、モー娘など他のハロプロメンバーも総出演させ、スマイレージにエールを送らせるという特別な演出も用意。メンバーの今後を思ってのことだった。

 アンコールでは、涙を流すメンバーもいた。リーダー和田彩花(19)は「もっともっと上を目指します!」と宣言。その姿をつんく♂は腕を組んだまま見つめていた。【横山慧】

 ◆つんく♂の病状経過

 今年3月6日に喉頭がんであることを公表した。その際、06年ごろから声帯左側に違和感があったこと、今年2月には手術と細胞検査を受け、喉頭声帯にがんがあると判明した経緯も明かした。それ以前の1月2日、都内で行われたハロプロの年始コンサート開演前には、かすれたガラガラ声で取材対応し、「声帯の筋肉の中に脂肪というか、異物ができてしまったようです」と説明。公表後、取材陣の前には姿を見せることはなく、4月5日に自らがプロデュースした母校近大の入学式に生中継で出演。言葉は発しなかったが、文書で祝辞を贈った。