日本人初のWBA世界ミドル級王者でタレント竹原慎二(39)原案のボクシング漫画「タナトス」(作画・落合祐介)が映画化され、10月に公開されることが26日、分かった。家庭内暴力で心に傷を負った不良少年が、ボクシングと出合い、人間として成長して行くストーリー。07年「週刊ヤングサンデー」(小学館)に連載(08年7月の同誌休刊で中止)、単行本(全8巻)も累計60万部を超えた。

 主人公・藤原陸を演じるのは、高校3年間ボクシングジムで鍛えた徳山秀典(29)。仮面ライダーシリーズや戦隊ものに数多く出演したアクション俳優。「格闘シーンのリアリティーが欠かせない」(城定秀夫監督)と抜てきされた。徳山は、トレーニングと卵白だけの食事を2カ月続け5キロ減量。体脂肪率も10%以下に絞り、“ボクサーの肉体”で撮影に臨んだ。

 3月末、最後の撮影となった全日本新人王決定戦の試合シーンでは「あえてパンチを当ててもらった」(徳山)と戦闘モード。現場を見守った竹原も「彼はすぐにでもプロになれる」と素質に太鼓判を押した。

 中学時代からけんかに明け暮れ、拳ひとつで底辺からはい上がった自分の生きざまをダブらせた物語に「(ボクシングには)人生を変える何かがある。それを伝えたかった。(徳山君が)見事に演じてくれた」と納得の仕上がり。

 タナトスとは死を象徴する神。心理学では人間の自己破壊的本能を表す言葉だという。徳山も「やるからには本気でやった。この映画を見て、ボクシングを始める人が出てきてほしい」と闘争本能むき出しの演技で応えた。【斎藤暢也】